あき

ハンニバル・ライジングのあきのレビュー・感想・評価

ハンニバル・ライジング(2007年製作の映画)
2.5
ハンニバルの象徴的な行為であるカニバリズムは、先天的精神異常の場合は別として、民族的慣習の場合と宗教的、主義的に後天的に変質する場合もあって、本作は後天的変質の側面から描いているけど、カニバリズムほどの異常行為に変質するには描かれた経緯に無理矢理感が否めず根拠が薄いと感じた。
またその根拠に日本人女性との関わりを描いているけど、日本人=日本刀、武士というイメージがそもそも安易だし、「羊たちの沈黙」における”拘束マスク”が甲冑の”面頬(めんぼお)”に似ているから取ってつけたように設定したようで浅はかに思われ、
しかも”羊たちの〜”の拘束マスクがインパクト大だったけど、あくまでアレは強制的に装着されたものであって、本作で自主的に面頬を装着して”羊たちの〜”を連想させるのは安直で強引すぎる。
主役のギャスパー・ウリエルが後のレクターの喋り方や喋る時の顔の角度など前作までをしっかり踏襲した役作りをしているところや、あまりに切ない美しさのコン・リーにただただ魅了されるのは見どころだけど、後の作品の前日譚としては前提に深みを欠いている。
でもこのシリーズ四部作の影響力で、”カニバリズム”に語感が似ているのもあるけど、キャスト名の”ハンニバル”という単語が人肉食いの同義語的に浸透しているのはやはり本シリーズの社会的成功を表している。
ちなみにギャスパー・ウリエルが今年(2022.1)に事故で37才の若さで亡くなったのはとても悲しい。合掌。
あき

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