流之助

ハンニバル・ライジングの流之助のネタバレレビュー・内容・結末

ハンニバル・ライジング(2007年製作の映画)
2.1

このレビューはネタバレを含みます

トンデモJAPAN要素がノイズになる映画。突然出てきた日本要素は何のため?いろいろな要素が後のシリーズ作品に繋がるものを持っているけれど、日本要素は繋がることは無い。頬当が拘束マスクに似ているっていう馬鹿げた連想なら大分お粗末。強引にも思えるリンクする要素と、ちぐはぐな日本要素。これらがとにかく合わない。不協和音。どうしても煩い。広島を持ち出しているのも凄く嫌。これがどれだけ雑味になるのか作り手は想像できていないのかな?

ハンニバルという誰もが知っているキャラクターを演じるという大役を担ったギャスパーは好演している。初登場シーンからラストシーンの出で立ちへと変化していく様も見事だし、血糊がとても似合っている。歪んだ表情も見事。彼のハンニバル・レクターも好き。
若いから身体を使ったアクションが多いのも、殺人にまだ慣れていない頃のハンニバルと思えば面白かった。
これまでの作品で、スマートに殺人を犯してきたハンニバル。その動線が分かりにくい(もはやほぼ語られない)ことで神秘性を帯びていたものがこの作品では剥ぎ取られてしまっているのが残念だけど、オリジンモノとしては悪くないキャラ設定だと私は感じる。
神秘性の喪失は恐怖の激減を伴うが、今やハンニバル・レクターという確固たるキャラクターとしてある程度固定されたイメージを持っているだけに、この理由付けになるのも頷ける。

但し、ウィル・グレアムに逮捕されるまで犯罪歴が無いとされるハンニバル・レクターにしては目立ちまくっているような気がしてそこにも雑さを感じた。

また、復讐を経て妹の死と自らも彼女を口にしてしまった罪を乗り越える描写がされていないことも中途半端な感じがある。こんなに弱点だらけの人間があのアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクターになるの?
ドラマシリーズのハンニバル・レクターは別バースのキャラクターなのでここで語っても仕方ないと思うけれど、その人物像はドラマ版の彼ともあまり繋がらない。

結論としては、オリジンモノとして納得できる物語ではあるが満足できる物語ではなかったのがとても残念。
ギャスパーの好演、贅沢な戦争描写などルックは良かった反面でそのガッカリ感が目立ってしまう。お粗末すぎる日本要素も集中力を削がれるので出すならちゃんと勉強してね、と言いたい。
リアルにしたいならリアルで緻密にディテールにこだわった画面づくりをしてほしい。
流之助

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