民主主義の暗部。オペラハットあたりから明らかな作風の変遷が見られる(楽観性からヒューマニズムへ傾いていく)ように、理想主義で固められていたキャプラ映画が次第にアメリカの現実に気付きはじめてる。
救援の相互関係がここでは完全に崩壊してるし、押し寄せる善意の人波の中で際立つ友や隣人といった人々も今回は全く登場せず、完全な負の共同体でしかない「群衆」は冷たい不特定多数者の塊として描かれる。
ただ、その匿名性の象徴としてのJohn Doeとはかなり説教臭いしマスメディア批判も極端なんだが、善のシンボルであるゲーリー・クーパーを生贄的な役割で起用することは、実はかなり厳しいことをやってるんじゃないか。