QTaka

群衆のQTakaのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
3.8
物語は、フェイク記事で始まった。

発行部数の低迷する地方新聞のリストラが事の発端で。
読者受けする刺激のある記事を求めたあまり、偽の投稿を元に偽のストーリーが始まった。
しかしながら、思いの外、読者受けしていく中で、これを利用しようとする企みが始まる。
嘘に嘘を重ねて、偽のストーリーと、でっち上げられた主人公。
新聞の発行部数とは別に、偽のストーリーが一人歩きし始め、社会現象となる。
ここに、キリスト教的な側面を伴わせるのがアメリカ風なのだろう。
政治も経済も、生活も、全部繋ぐのは教会ってことなのだろう。
この一人歩きし始めた社会運動自体は、宗教的教義にも叶うものだろうし、それとして、ほんとうに別の話としてうごきはじめたようにおもえるところで、この偽ストーリーの生みの親たちが本性を出し始める。政治利用である。
お金と権力に溺れた老人たちにとって、社会とはこれらを手に入れ、安住の地を確立するための道具に過ぎないということか。
既に市民運動として独り立ちしたかに見えた運動も、この影の演出者たちによって、打ち砕かれる。
都合の悪いことは、無かったことにするそういう力の使い方なのだろう。

ラストシーンまでは語らない。
ただ、この映画のストーリーは、大方、最近目にした事と重なってくる。
事の発端でフェイク記事が登場するところなど、まるで現代のインターネット社会を予想していたかのようだ。
一方、市民がそれらの記事、情報に踊らされ、行動し始めるのは、なにも今日インターネット社会だからということでもないということに気づく。
アメリカの、ハリウッドの映画が、’40年代にこんな世界を描いていたなんて、驚きです。
QTaka

QTaka