秋日和

恋多き女の秋日和のレビュー・感想・評価

恋多き女(1956年製作の映画)
4.0
どんなことが起こっても「馬鹿馬鹿しい!」と笑い飛ばしてしまえるような強さと自由さが、ルノワールにはあるような気がする。欲望のままに男が女を走って追いかけ回すシーンは、別の監督が演出していたならば眉をしかめずにはいられないようになっていたかもしれないけれど、ルノワールは思い切り滑稽な光景として場面を捉え、笑いに変換している。冒頭付近でさり気なく描かれる子供の誘拐(と、言ったら大袈裟だけど)と返却(!)シーン一つとっても愉快で、観ていて思わず笑ってしまう。思うに、ルノワールは「深刻さ」を巧みに回避しているのではないだろうか。難しそうな顔をした大人たちが話し合いをしているシーンではカメラをスッと移動させて日本人形(らしきもの)をフレームインし、やっぱり「深刻さ」を回避していた。
赤いドレスと白いドレスを着た女が対面するショットの構図のキマり具合。『フレンチ・カンカン』のように華やかで賑やかで色鮮やかな、多幸感溢れるパーティーシーン。外野=大衆への眼差し。そして、閉ざされた窓が解放されるかのような気持ちよさを伴うエンディング。「恥ずかしがらず、たまには愛=最強って大声で叫んでもいいじゃないか?」とルノワールに言われた気分。素晴らしかった。こんな映画がもっと作られますようにと思わずにはいられない。
秋日和

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