Omizu

失はれた地平線のOmizuのレビュー・感想・評価

失はれた地平線(1937年製作の映画)
3.8
【第10回アカデミー賞 美術賞、編集賞受賞】
『或る夜の出来事』フランク・キャプラ監督がジェームズ・ヒルトンの同名小説を映画化した作品。アカデミー賞では作品賞など全7部門にノミネート、美術賞と編集賞を受賞した。

面白かった。この時代に考えられた理想郷を見事に映像化している。シャングリラと名付けられたこの理想郷はチベットあたりを想定しているのだろう。美術や衣装が素晴らしい。

ハイジャックにあって見知らぬ土地に連れてこられた英国人たち、それぞれのスタンスが変化していく。

まさに戦時中であった公開当時は戦争批判のため、その後共産主義批判のため二度にわたって検閲にあった。そのためいくつかの場面は失われ、静止画で補われてた。

失われた場面があるのは観ていて残念だったが、それでもこの映画の素晴らしさは損なわれない。夢幻的な寺院の美術も素晴らしく、キャプラ監督らしくテンポ良く進んでいくストーリーテリングもよかった。

今だったらシャングリラ側のキャストは当事者キャスティングするだろうなとは思う。1973年にミュージカルとしてリメイクされているが、そちらは残念ながら観る手段がなくどうなっているのか分からないが。

あくまで白人の思い描くユートピア、というのは感じないでもない。しかし「もし理想郷に着いてしまったらどうする?」という根源的な疑問と希望を問いかけてくるような一作だと思った。

冒険活劇としても楽しく、キャプラ監督らしい軽妙な面白さがある独特な一作だった。長いのでこれまで敬遠していたが、見始めると止まらない。非常に魅力的な作品。好き。
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