KojiYamanaka

横道世之介のKojiYamanakaのネタバレレビュー・内容・結末

横道世之介(2013年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

お葬式には、その人の人生があらわれる。

作中で、主人公である横道世之介のお葬式が描かれた訳ではないけれど、きっとみんな世之介との思い出を思い返しながら、笑っていたんだろう。ちょっと目に涙を浮かべながら。

映画の主人公って、基本的にはとんでもなくすごいヤツか、とんでもなくダメなやつかのどっちかだと思う。あるいはダメなやつがすごいヤツになったり。

で、横道世之介はというと、”普通”なのである。もうちょっというと、ちょっと変わってるけど、いいヤツで憎めない。走り方がおしっこ我慢してるときみたい気持ち悪いし、空気読めない言動をするけど、彼女を妊娠させてしまって困っている友人になんのためらいもなくお金を貸してあげたり、また別の友人がゲイだと知っても「それが何?」みたいな感じでそれまでと変わらず付き合ったり。

考えてみれば、そういう”ちょっと変わってるけど、いいヤツで憎めない”存在って、たまにいる。モテる訳じゃないけど、そいつの周りにはいつも人が集まってるやつ。

この映画は、僕の、あなたの周りにもいる”あんなヤツ”の映画だ。”あんなヤツ”がいることで、人生が、ほんの少し彩りを増すこと。”あんなヤツ”の人生も、とんでもなくすごいヤツの人生と比べても見劣りしないくらい、彩りゆたかなことを教えてくれる。

そしてきっと、僕も誰かにとっての”あんなヤツ”なのかもしれない。というか、そうなりたい。別に彼氏や彼女じゃないし、親友でもない。年賀状も書かないし、結婚式にも呼ばれない。でも、ちょっとしたタイミングでふと「あんなヤツいたな」って思い出されることもあるんだろう。そのときに、クスッと思い出し笑いをしてもらえたら、こんな普通の人生も悪くないなぁ、なんて。
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