クリーム

秘密と嘘のクリームのレビュー・感想・評価

秘密と嘘(1996年製作の映画)
4.1
地味だけど凄い映画。何が凄いって、この映画、脚本が無いそうです。監督と役者が登場人物の心理について入念に話し合い、その人になりきって、役者のアドリブだけで構成されている。 にも関わらずストーリーも面白く、各シーンの完成度も高い。ラストは温かい気持ちになります。ちょっとビックリな映画でした。
悪い人ではないが、考え無しに良く喋り回りを苛つかせるシンシア。シングルマザーで娘ロクサンヌと2人暮らし。ロクサンヌは母にいつもイライラ。写真館を営む弟のモーリスは、シンシアに育てられた事や姪っこ可愛さに、姉を経済的に援助している。また、彼には子供がおらず、仕事は成功しているが、浪費家の妻モニカとの間もやや上手く行っていなかった。

若干、謎解を解いていく展開なので、情報はここまでの方が楽しく観れると思います。



ネタバレ↓



役者さん達のクオリティが高い。見た目が良い意味で普通。だからこそ、リアリティを感じる演技でした。
ホーテンスは亡くなった両親から養女である事を知らされていた。 母の葬式後、実の親を捜し始めます。彼女は、シンシアを見つけ出し、電話をかけ、会います。当時16歳だったシンシアは、自分の産んだ赤ん坊も見ずに養子に出しました。なので、黒人で女の子だと言う事も知らなかった。が、 ホーテンスは情報開示の時に会う事を望まれない可能性が高いかも知れないと言われていたので、動揺する母に驚きません。シンシアはロクサンヌに邪険にされている事もあり、2人は会うようになります。シンシアは無神経だけど、陽気で情に厚い性格で、ホーテンスも実の子として愛するようになります。 そして、モーリスの家でのロクサンヌの誕生会にもホーテンスを招待した。
シンシアは後先や人の気持ちは考えられないので、ホーテンスがロクサンヌの姉だと明かします。 何も知らないロクサンヌは家を飛び出すが、モーリスに諭され戻ってくる。
再び言い合いになり、無神経なシンシアはモーリスに子供がいない事でモニカを責めるのです。そして、語られるモニカの不妊の苦しみ。調子の良いシンシアは、慰める。
モーリスは気遣いの人で、一番辛いであろうホーテンスを気遣う。 母に捨てられ、一番傷ついているはずのホーテンスをモーリスが賞賛するシーンは良かったです。シンシアは、ロクサンヌの父の事を話し(医者志望の学生で、ある日居なくなった) 、ホーテンスの父については、辛くて話せないと言う。皆で泣きながら寄り添うシーンは、ちょっと無理矢理な気がしたが一件落着。
ラストは家の庭で、シンシアと二人の娘がお茶をします。 「人生っていいわね」とシンシアが言う。お前が言うな!なんですけど、娘達の懐が広いのでホッコリします。
これが脚本無しって、監督も役者さんも製作陣営皆凄い。良い映画でした。
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