【キネマ旬報日本ベストテン1987 第3位】
『三里塚』シリーズや『ニッポン国 古屋敷村』などで知られるドキュメンタリー作家・小川紳介の作品。
小川紳介氏の地元、山形県牧野村で実際に稲作を行い、その経過と分析を軸として、牧野村に伝わる民話や伝説を織り交ぜ構成した意欲作。特に民話、伝説は本人の語り、役者による再現に留まらず、村人による再現も行うなど多様な語り口で「牧野村」を再構築してみせる。
牧野村自体のポートレートとしての側面もありつつ、昔あった普遍的な日本の村のポートレートでもある。民話や伝説にみられる自然や性への信仰も興味深い。
最後にはこの作品を一ヶ月間プレミア上映した様子も映されるのだが、それもまた面白い。
一つの村の肖像であり日本の肖像でもある、スケール感のある作品だと思う。