デニロ

1000年刻みの日時計 牧野村物語のデニロのレビュー・感想・評価

3.5
『ニッポン国・古屋敷村』から5年。小川プロダクションが生活の拠点を記録しつつ、狭い境界から歴史を語り世界を探る。これはまさしく初めて見る作品です。

1987年当時は山ばかり登っていて映画生活とはかけ離れて生活をしていた。山の中で数夜を過ごすだけでもはや別の人間になったかのようにこころと体が騒めき立ったものです。本当の暗闇。流れるように煌めく星々。それらに吸い込まれてしまうような妖しい気分。一度経験してしまうと恐怖と快楽が混在する。

道祖神のエピソードで笑わせてくれた後、好奇心の塊の小川プロはそのエピソードに感応して自らも土地を掘り返す。掘り進むにつれて縄文の土器の欠片やら焼けた石、石包丁の類いが現れる。地元の考古学専門家の協力を得てそれが炉のあった場所であることが分かり、土偶や山の方向を指し示す印などを見つけて・・・・。人々が集まりその場所で火を焚き何をしていたのだろうかと古代人のこころに思いを寄せる。

山から女性が下りてきて云々の話は『ニッポン国・古屋敷村』でも紹介されたが、本作でも稲作に必要な水を引く、という作業の際にわたしはそれが得意なのです、と言いつつ現れる。木村みねさんも問わず語りで山の神のことをとうとうと話しているのだが、字幕を読んでも詳細はとんと不明だ。小川伸介は最後に観客の肩の力を抜かせるが如くに彼女を登場させてくる。柳田國男もこのようにして「遠野物語」等の民俗を収集記録したのだろうか。

それにしても稲の交配は、というよりも、生殖行為というものはすべからく生が横溢していてエロチックである。

1987年製作公開。撮影田村正毅。監督小川紳介。

アテネフランセ 没後30年 小川紳介の検証と継承 にて
デニロ

デニロ