てっちゃん

1000年刻みの日時計 牧野村物語のてっちゃんのレビュー・感想・評価

4.0
さて、次なる劇場は閉館決定した名古屋シネマテークさんです。
閉館月はドキュメンタリー特集が組み込まれており、これぞシネマテークという感じな最後だなと思いました。

いろんな感情は湧いてきますが、階段を一段、一段と踏みしめて登っていきます。

部室みたいなカウンターにいつもの店員さん。
こんにちはと挨拶をしてチケットを購入して、会員カードにスタンプを押してもらいます。
何度もしているいつもの動作ですが、それすら寂しく感じてしまいます。

閉館前だからお客さんたくさんかなと思ったけど、3〜4割くらいの客入りでした。
まあ3時間半超えの超大作だから身構えるよね、と思いつつ、上映開始です。

もう閉館が決まっているので、次なる予定もないということで番宣もなし。

小川監督さんが生活している牧野村というところの歴史なり風土を追っていく、そんなドキュメンタリー。
しかも村民の方達が全バックアップしてくれているという、ほっこり感満載です。

前半は理科の授業みたいなNHK教育番組ばりの、稲穂の成長過程について、田づくりについてなどなど、自然との(田んぼの水面を接写する描写が非常に印象的)共存というか生かされていることが伝わってくる感じ。

そこへ地元住民の方達が昔から伝わる物語を語っていくと、いつしか言い伝えの物語、この村の歴史へと物語は変わっていく。
あれよあれよと時間は流れていき、土着なる物語へと進化していく。

さらには発掘作業へと話は進んでいったりして、古来におけるこの地の役割だったり、住んでいたであろう人達の生活模様が見えてくる。

すごいぞ、すごすぎるぞ。
一本のドキュメンタリーで時間が行ったり来たりしている。
それもものすごく自然な感じで。
しかも再現シーンのときには村人の方達が全面協力している模様。
ほっこりもくるんだけど、いつかしらの誰かしらのご先祖さんを後の子孫が演じているかもしれないって思ったら、なんてロマン溢れるんでしょうか。

3時間半超えの超大作ではありますが、目を惹きつけて離さない流れにすっかりと魅入っておりました。

エンドクレジットでは、村人の方達がグラウンドを周りながら挨拶していくという特別仕様。
なんて粋なエンディングなのでしょうか。

この村に限ったことではなく、今私が住んでいる地域にももちろん過去はあったわけで、でもそれについては全く知らない。
本作を観て、この地にもロマンあふれることがあったのかなとぼんやり考えていた。

ちなみに本作がシネマテーク最後かもなと思っていたけど、最終週に駆けつけることができて、"ゆきゆきて、神軍"を観ました。
(本当は最終日に駆けつけたかったのに体調不良で行けなかったから、無理して行っておいて良かった)

超満員の満席御礼といった具合だったのだけど、これだけの人に愛される映画館であって、この1/3でもお客さんが入っていたら存続していたんじゃないのかなとも思ったりした。
最後かもしれないと思って、シネマテークを背景に写真を撮ってもらった。

私にとってとても大切な場所であり、心の拠り所となっていた場所。
映画を大好きにさせてくれた場所。
私の感性を変えてくれた場所。
とてもとても大切な友人と別れる、そんな気持ちになってしまいます。

私の思い出として、シネマテークは残っていくだろうし、ふと思い出すことになっていくのだろう。
本当にお疲れさまでしたの言葉で〆ます。
てっちゃん

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