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シシリーの黒い霧の一人旅のレビュー・感想・評価

シシリーの黒い霧(1962年製作の映画)
3.0
第12回ベルリン国際映画祭監督賞。
フランチェスコ・ロージ監督作。

イタリアの鬼才:フランチェスコ・ロージが監督を務めた実録サスペンスで、シチリアの独立義勇軍の闘士であり義賊としても名を馳せた実在の人物:サルヴァトーレ・ジュリアーノ(1922-1950)の死の真相に迫ります。

終戦後の1950年に射殺されたサルヴァトーレ・ジュリアーノの謎に包まれた死の真相を、数多くの関係者たちの証言や記録を基に、過去と現在を交錯させながら描き出していく戦後イタリア(シチリア)解剖録で、二次大戦末期から終戦後にかけてのイタリア国内の不穏な情勢が如実に反映されています。

終戦直後の混乱期の中で、シチリア独立のため山賊団を率いて闘ったサルヴァトーレ・ジュリアーノ殺害事件を巡る刑事裁判の行方を軸に、“当時のシチリアで何が起きていたのか”を紐解いていく内容となっていて、独立義勇軍、憲兵、警察、マフィア、一般市民…とシチリアにおける各勢力の思惑と関係性が複雑さを帯びながら明らかにされていきます。

サルヴァトーレ・ジュリアーノの死とその後の裁判を通じて、大戦末期~終戦後のシチリアの不穏な空気感覚を現出させていて、シチリア独立のために闘い貧者から慕われていた一人の男の死の背後に潜む巨大な影の気配が絶えず不気味な感覚を作り出していますし、明快なドラマ性を排したドキュメンタリータッチの画作りも物語の真実味を高めています。
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