このレビューはネタバレを含みます
メロドラマの十八番映画
田舎から出てきた娘・キャリーが、渋くてカッコよく富裕層のおじさん・ジョージと恋に落ちる話。おじさんは愛を信じて、全てを投げ捨てて彼女と共になるが、言い出せなかったことが嘘になって重なり、次第に転落していく。その一方、若く美しい娘は成功の道へと駆け上がっていく〜というアッと驚く展開もない、単純なストーリー。
だけど、超面白い。2時間があっという間だった。なんでか考えたけど、
一番は、カメラワークかな。
カメラワークが滑らかに、するすると必要なショットを撮るために動いていくので飽きない。だけど静かに哀しくみせたいときはグッと耐えて撮る。緩急がよかった。
キャリーが解雇されてすぐ居候することになったチャーリーの部屋、ジョージの立派な部屋、ジョージが経営するレストラン兼バー、ジョージとキャリーが少しの間住んだホテル、結婚後住んだ安いアパート、キャリーと別れたジョージが行きついた安くてすぐ追い出される宿、これらの部屋を、違和感なくカメラワークで追いかけることによって、空間が観客にとってよく理解される。すると、語らずとも人物らが置かれる環境の生活水準がみえて、俳優たちの表情の意味が掴めてくる。
つまり、黄昏は空間をいやらしくなく舐め回すカメラワークによって、飽きさせもせず、俳優らを引き立てる、立派な一つの台詞として扱われている。素晴らしい、面白い。
空間をどう撮るかは、まさに言葉だと思い知る。