荒野の狼

赤い夕陽の渡り鳥の荒野の狼のレビュー・感想・評価

赤い夕陽の渡り鳥(1960年製作の映画)
4.0
1960年公開の小林旭主演の渡り鳥シリーズ第4弾。本作の一番の魅力は福島県の磐梯朝日国立公園の美しさで、吾妻小富士のある浄土平周辺と、会津磐梯山と周辺の湖の二つの領域が複数回登場している。映画の冒頭は、吾妻小富士の頂上のトレイルを小林が馬に乗って登場し、この後、映画のタイトルが馬影のある山頂をバックにあらわれて映画はスタートする。本作では吾妻スカイライン開通式(1959年)も映画のストーリーの一部として登場するが、映画のスカイラインは舗装がされておらず、馬で移動する小林に違和感がない(2023年現在は、完全に舗装されている)。吾妻八景のひとつ「つばくろ谷」にかかる不動沢橋も本作では小林と殺し屋の深江章喜が車で同橋を通過するシーンで登場するが、現在のものとは形状が異なっている(現在の橋は2000年に架け替えられた2代目の橋)。さらに福島駅のシーンでは蒸気機関車D51も登場するなど、当時の時代の記録となる映像が本作を貴重なものとしている。ちなみに浄土平レストハウスには、本作の写真、ポスターの他、等身大の小林旭と宍戸錠のパネルも設置されている。なお本作は温泉の利権をめぐる問題が描かれているが、スカイラインの入り口には高湯温泉があり、映画のスタッフは同温泉に宿泊(映画の中では元湯のみで温泉自体は登場せず)。
小林の他、浅丘ルリ子、宍戸錠、白木マリら同シリーズの多作品に出演している俳優が登場するが別人役であり、本作は多作とは関係がなく独立して楽しめる。79分の長さであるが、複数の過去の逸話が紹介され、登場人物が多く、盛り込み過ぎという点では失敗している。たとえば、東京に過去があり、同地で宍戸錠と関連がある女性として白木と楠侑子が登場するが、いずれも過去の説明が中途半端になってしまっている。ここは、白木と楠の二つの役をひとつにまとめておくべきところ。
小林は、昔の西部劇「シェーン」の主人公を思わせる役だが、見どころは民謡「会津磐梯山」を歌う場面で、小林は歌謡曲を歌う時とは異なり、美しい濁りのない声を披露している。宍戸は、勧善懲悪ストーリーにひねりを与える善悪兼ね備えた役だが、白木との絡みにおいては本作のキャラクターに相応しくない行動をとっており一貫性がなくなってしまったのは残念。
映画公開時、小林は22歳、浅丘は20歳で交際中であったが、映画での絡みは表面的。浅丘は、若く清楚で美しいが、小林らに守られるだけの損な役どころ。白木は過去のある役で、ダンスから銃を撃つアクションもあり、印象に残る。
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