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宝石泥棒
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『宝石泥棒』に投稿された感想・評価

「お洒落映画の傑作」と聞いたから観に行かなくっちゃとなったんだが────
まずは、スタア映画でした。次に、巧い映画でした。そして一応、洗練されてる方かな。

三つ巴ストーリーがわかりやすい。ダイヤ泥棒⇔恋泥棒、のスイッチ構築もナチュラル。
屋内シーン多く、主要な六人がほぼ全人物な感じなので、TVドラマ的な気安さ。あるとするならば映画の醍醐味は、まずはスタアたちの在りように探せということかな。
台詞を言ってない時の川口浩さんと野添ひとみさんのまなざし演技が、最初からすばらしかった。外国人のようには表情が豊かじゃない日本人だって、こんなにも目線と顔の少々の振りだけでその場その場の大切なピースになれるなんて、さすがプロ。
邦画黄金期の至宝・山本富士子さんは、もういつも通りに美形です。あんな高い鼻に生まれついたら誰だって女優めざしちゃう。主役の彼女の(意外なほどの)ぽっちゃりな?魅力を捉えたアングルが本作では多い気がします。それに、ファン向けにか彼女だけはアップがたくさん。
その富士子、後半の窓辺の伝い歩きのところ、命綱もなしに頑張ったね! 見えてる以上に大変だったはず。ハイヒールであんなことナカナカできないよ。。
野添さんは、鼻が低いのでロマンス担当の一人へと祭り上げられるとちょっと苦しくなるところ、本作では“女中”扱いの犯罪方面アシストをひたすら快く引き受け実直な働きぶりです。
船越英二さんに至っては、“二枚目半こそボクぁ天職”と言わんばかりに若い皆を包むようにカンツォーネを唄いっぱなしでこれまた良きジョブ。さらに“ハッとさせる可笑しさ”をプレゼントしてくれました。鏡の割れるシーンで!
そのほか菅原謙次さん扮する“プチ探偵”がまた渋いような酸っぱいようなイイ味を出し、(これは脚本担当の教養の勝利だけど)“わがベスト探偵小説”の第7位に乱歩の知る人ぞ知る超傑作『心理試験』を挙げるなどすばらしい台詞をペラペラしていきますが、、、彼にしばしばエスコートされたイケてない盗まれ役の角梨枝子さんは、イケてない美マダム感の出し方は適切ながら、演技者としてクシャミが下手くそすぎ。

そういうわけで、お洒落意識高い映画という以前に、普通に面白い娯楽作だった。何度もの落水には笑えたし、射撃シーンは嘘っぽくも何だか新鮮に映ったし、外車やリップスティックやウィッグとかの使い方にも当時の演出家たちの精一杯が見て取れる。
でも、フランス映画の洒落感の凄さは、例えば主演らよりもむしろどうってことないエキストラたちの中に超絶的な美男美女がごろごろいるところだったりするのだけど、、、、この映画の残念なところは、スタア六人以外に一切目が向かないようにしてある点。それと、黴の生えかけた音楽&スローダンス。モダンジャズ多用で行ってたら(勝手な21世紀目線的にも)時代超越作になってたのに、あくまでも「全盛期の大映の宝物」にとどまってる、とわずかに惜しむ。
半兵衛

半兵衛の感想・評価

3.8
宝石を狙う二つの泥棒グループがお互いの正体に気づかないまま時には恋に落ちつつも20カラットもの宝石を盗まんと宝石の持ち主であるマダムや謎の小説家とともに駆け引きを繰り広げる洒落た犯罪ドラマ。

こういう映画になると役者の持ち味が重要になってくるが、着物のイメージが強い山本富士子が本作では洋装をノーブルに着こなしていて主人公の令嬢に偽装した泥棒というキャラにぴったりだし、川口浩のお坊っちゃま演技も食えない泥棒男のキャラに合っている。そして彼らをサポートする船越英二や野添ひとみの脇役ぶりも素晴らしい。そして大人向けのドラマを作っている大映が製作しているのもアダルトなドラマの雰囲気を大きく盛り上げている。

井上梅次監督の洋画を意識したようなゴージャスな演出や「宝石と恋の行方はどうなる?」というラブとサスペンスが混じったドラマに二重三重の仕組みを施して読ませない脚本も見事、ただエキストラが普通の日本人なので洋画のような豪華なテイストが若干失われるのが残念だけど。

そして正体が全く読めず泥棒グループを翻弄する菅原謙次のトリックスターぶりも最高、彼が論じるミステリー論及び好きなミステリー小説ベストはミステリーファンならニヤリとなるはず。

山本富士子が後半ホテルの窓の外の狭い足場を歩く場面は見ているこちらも冷や汗が、しかもそれをハイヒールで歩いているのでますます緊張感が。

終盤緊張感が失われ中弛みするものの、映画でしかなし得ない粋なラストに顔が緩む。船越と川口のやりとりはもはや『ルパン三世』のルパンと次元。

菅原謙次の最期の台詞に爆笑。
mingo

mingoの感想・評価

4.1
「あなたはもう私の心を盗んでしまった。恋の泥棒ですよ」全員が盗人クズ野郎でベッタベタな台詞展開ながらも、めくるめく衣装の連続に、入れ替わる宝石の行方、欲望に左右される恋愛感情、随所に遊び心をキラキラ詰め込んだ戦後エンタメ最後の巨匠(今勝手に名付けました)梅次先生のサスペンス恋愛劇の傑作。川口野添船越山本(若尾)いつもの大映黄金期の豪華俳優は見飽きるどころかこいつらの作品何本あるんやと思わされるのと同時に、船越の演技の幅広さ、川口の男前さ、山本の妖艶な色気、野添のお茶目さ、ロメールのような色使いの衣装と相まって、全員が愛おしい。もちろん万能俳優菅原謙次もお忘れなく。アテネやめてこっちにして正解だった、、、これはお気に作品として家に置いておきたい。心を映画泥棒に盗られてしまった、

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