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黒い肖像の一人旅のレビュー・感想・評価

黒い肖像(1960年製作の映画)
5.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
マイケル・ゴードン監督作。

ロンドンやブロードウェイで上演されたアイヴァン・ゴフ&ベン・ロバーツによる1941年発表の同名戯曲をマイケル・ゴードン監督が映画化したサスペンスで、完全犯罪を目論む男女を待ち受ける数奇な運命を見つめています。

サンフランシスコの海運会社の社長を務めている寝たきりの夫を、恋人である精神科医と共謀して自然死と見せかけ殺害した未亡人が、葬儀後自分たちの犯罪行為を指摘した差出人不明の手紙を受け取ったことで次第に疑心暗鬼に陥っていく様子を描いたもので、“手紙を送ったのは誰なのか”―を最大の焦点にして、差出人の正体を特定すべく奔走する男女の姿を描いたミステリー仕立てのサスペンスとなっています。

傲慢な夫を殺した未亡人とその恋人である医師が、差出人不明の手紙に翻弄され罪に罪を重ね、やがて泥沼に嵌っていく様を、二人の緊迫した心理の推移と共にスリリングに映し出していく愛憎渦巻くサスペンスで、家政婦、運転手、船乗り、継娘、顧問弁護士…と二人を取り巻く数多くの登場人物たちの中から差出人の正体を予想するミステリーとしても最後まで愉しめる娯楽作となっています。

次第に窮地に陥っていくジリ貧男女に扮した、“セーターガール”という愛称で親しまれたグラマー女優:ラナ・ターナーと野性味が持ち味の名優:アンソニー・クインが迫真の演技を魅せていて、中でもクライマックスでA・クインが見せる焦燥の挙動には不気味な狂気が滲み出ています。
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