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リメンバー・ミーのNMのネタバレレビュー・内容・結末

リメンバー・ミー(2010年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

なんという作品。
最後は思わず「えぇー……」と声が出た。
何も調べずに見てほしい。そういう話?!となること請け合い。

確かに恋愛もあるが、ロマンスにカテゴライズされるのはもったいない。もしかするとそれも狙いなのだろうか。
メインは親子のこじれた関係性。そしてラストはそれまで全く出てこない要素で終わる。びっくり。

観終わってみると父親たちの行動も、一部しか見せられていなかった可能性が出てくる。
タイラーからすれば聞く耳を持たない父親だが、本当にそうだったのだろうか。タイラーは誰かのせいにしなければやっていけなかったということはないだろうか。
タイラー視点からしか描かれなかったので、観客は当然それが真実なのだろうと思い込む。
タイラーをすぐ保釈してやったのは父親自身の保身のためだと思いこんでいたがその証拠はない。ただ親として当然のことをしただけかもしれない。
アリーとの会話も普通だった。おかしくなるのはタイラーとだからこそ。
大事な会議中でも息子からの電話には出るし誕生日も忘れてない。食事会に誘われるとわずかに嬉しそうにも見えた。
コーヒーに砂糖入れたくてずっと待ってたけどタイミングがなくて結果大事なときに言ってしまっただけかもしれない。
「こんな父親でも」というセリフが印象に残った。

アリーの父も、アリーから目を離したすきに、愛する妻のときのように消えてしまうかもしれないと思っていただろう。あとでまた後悔したくない。嫌われようとそれを阻止せねば。タイラーが自分からアリーを奪おうとするなら徹底的に戦わなくてはならない。妻を奪ったやつらと同じだと。
彼は同じ映画を二度観て二度泣いた人。

それと父親二人の職業設定も良い。
家族が大変なとき力になってやれる職業と、あの日最も必要とされた職業の一つと。

ピアース・ブロスナンの車を降りて見上げる演技が良かった。取り乱さず、感情を表に出さない。ただ呼吸だけが乱れ肩が上下する。信じがたい光景を目にしたときのチャールズらしい態度。

見直してみるとラストへの布石のような要素はいくつかある。というかそう思えてくる。
アリーを初めて見かけた世界政治学の授業ではテロリストについて講義がされていた。
エイダンは喧嘩の夜、とにかくNYは最高だと絶賛している。

吹替版が無料だったのでそれを観たが、文章がおかしいところがある。どういう意味なのか頻繁にとまどった。想像で補うしかない。無理やり文字数を制限したようなすごく端折ったような訳。

尻込みする主人公といつも一緒にいて背中を押したりピンチを救ったりする友人役がこの作品でも重要な役割をしている。
エイダンは軽薄だが、自転車を盗むというしょうもない案には笑ってしまった。


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なんとなく本屋で働いている21歳のタイラー。
大学に時々聴講には行くが入学はしていない。
6年前自殺した兄マイケルへ向けて、よく日記を書く。
今自分は同じ歳になったが、まだ自分には何もない。

大御所弁護士の父は仕事人間。
タイラーは、兄の自殺は高圧的な父のせいもあると思っている。彼はミュージシャンとして頑張る途中だった。
父の態度は今も変わらない。タイラーはうんざり。
両親は離婚し、再婚した母親は夫と末っ子の妹と暮らしている。

学生であるルームメイトが飲みに連れ出した。
夜の街でタイラーは喧嘩を見かけ、悪くない方を庇おうとしてついそれに参加してしまう。
警察は来たが、彼らは庇うどころか正確な現場の状況把握など興味がない。
タイラーは警察としての道義を問い正すが相手にもされなかった。行こうとする警官に追いすがると羽交い締めにされぶつかった拍子に目の上が切れた。
タイラーは留置所へ。

アリーの母は、幼い頃眼の前で強盗に射殺された。
父親はタイラーの喧嘩の現場に来たあの警官。
あのとき妻を亡くしたぶん一人娘をこの上なく大事にしていて過保護、過干渉。

ルームメイトが大学で、喧嘩のときの警察とその娘を見かけた。
タイラーに報告。娘に復讐してやれよとそそのかす。
タイラーは復讐などするつもりはない。
だが見るとその女性は、聴講した授業で見かけたことがあった。印象に残っていたので声をかけてみる。
そのまま二人で食事へ。
アリーは家までタクシーで帰る。母のことがあって地下鉄には乗らない。

アリーはタイラーのタトゥーを見た。左胸、誰かの名前。亡き兄について知った。
そして妹のこと、父親のことも。

普段酒を飲まないアリーは酔い潰れてしまい、そのままタイラーの部屋まで寝る。
もちろん父親は心配している。部屋をあさり、警察のツテまで頼って、朝まで起きて待っていた。
アリーは慌てて帰宅。
いない間ノートまで見られていたことで、容疑者扱いするなと喧嘩になる。
父親は、怪しいね、どんな男だ、ドラッグをやっているかもしれない、と子どもを信用しない。
お前はまだ子どもだと断言し、アリーが反論するとぶたれた。
すぐに謝ったが、ショックを受けたアリーは家を出ていった。

タイラーの部屋に身を寄せた。
仲良くなる二人。

妹の発表会が近づく。
父が来なかったらとなると傷つくだろうと心配する母親に、タイラーは俺が連れて行くと約束した。
タイラーはプライドをへし折って発表会の前に食事会をセッティング。
食事会はアリーと三人。
父は遅れてきたが、アリーは父と上手くやってくれた。
タイラーは妹のため、アリーのため、顔を見ると次々湧いてくる呪いの言葉を必死に抑えながら食事を終えた。
食事会のあと三人で発表会に向かう予定だったが、父は仕事で戻ってしまう。
アリーは会場でうつむいて待っている。
みんな慰めるが、幼い彼女はもう待てず帰ってしまった。
展示してあったのは父親の絵。
我慢の限界を越えたタイラーは、父のオフィスに怒鳴り込む。
どうしてこの日ぐらい来れないんだ、あんたの他の子どもも兄のように首を吊るだろう、と。
しかし父は怒るだけで聞く耳をもたなかった。自分が正しいと信じている。
帰宅するとアリーが慰めてくれた。

母親家族と、アリーやエイデンたちと家族のように過ごす日々。
その様子を父親の同僚が目撃していた。同僚は父親が日々娘のことで頭をいっぱいにしているのを見ていた。
タイラーが帰宅すると、アリーの父親が家探ししていた。
娘はどこだと迫る。そしていきなり兄やタイラーの生い立ちを指摘。
怒ったタイラーは、アリーは遊びだと挑発。
父親はタイラーの首を締め上げるが、正気に戻り帰っていった。

父親が帰ったあとアリーも帰宅。
父親と顔見知りである理由を話すと、怒って家へ戻っていった。

妹は以前からクラスメイトたちからからかいの対象となっていた。
しかしある日誕生日パーティーに呼ばれたので勇気を出してお祝いに行った。
するとそこで長い髪をばっさりと切られてしまった。ひどいショック状態。
母親が連れ帰りタイラーもかけつけ、エイデンやあの日以来アリーも来てくれた。
休みだったらしい父親も飛んできた。

ショートカットにして学校に復帰する妹についていったタイラー。
するとまたしてもからかわれた。
大人を馬鹿にしてことの重大さを分かっていない子どもたちを見て、タイラーは窓ガラスを叩き割り、からかった生徒を震え上がらせた。
妹は黙って自分のために本気で怒ってくれる人を見つめた。
再び留置所へ入ったタイラー。父親が保釈の手配。
父はいじめの犯人を一週間以内に転校させるよう、学校に働きかけた。

タイラーは妹の件もあってアリーとも復縁。
父も妹を気にかけるようになった。
誰もいない父のオフィスに入ったタイラーは、父のPCのスクリーンセーバーが子どもたちのたくさんの写真のスライドショーであることを知った。
なかににはもちろん兄の写真もある。
つらかったこの数年。でももしかしたらこれから何か変わるのかもしれない。
窓から外を眺めるタイラー。
そこは高くそびえ立つタワービルの一室。隣には全く同じ高さのビルがある。
今日は2001年、9月11日。
数時間後、舞い散る無数の書類の破片と灰の中、母も父も、妹も、エイデンもアリーもアリーの父も、崩れ行くビルを見上げていた。

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