kojikoji

日本橋のkojikojiのレビュー・感想・評価

日本橋(1956年製作の映画)
3.6
 ずいぶん昔の話だが、場末のスナックでしこたま飲んで、たまたまそこに来ていた知らないサラリーマンと映画の話で口論になった。どんな話をしたか全く覚えていないのだが、その客がしきりに言っていた言葉だけが頭の中に残っていた。「日本映画の最高傑作は『日本橋』だ。」
 それ以来、この映画がずっと気になっていた。

1956年 監督は市川崑。
原作は泉鏡花。1929年溝口健二がサイレントで同作品を撮っている。
この作品はカラーによるリメイク作品だ。

 怪しく美しい女達の情念の世界を描いた作品。ジャケがいい。こんな感じの映画なら、酔っ払いのはったりでもないかと思いながら観た。
前半は非常に良かったのだが…

日本橋の芸者お孝(淡島千景)は意地と張りが身上で、界隈切っての美人芸者清葉(山本富士子)と張合っている。
 そんなお孝が日本橋の幽霊が出るという噂のある露地の細道の家に移転したところから映画が始まる。
 路地を写した画面に突然後ろ姿の芸者が現れる。
なんか変だと思ったら通りかかった芸者達が幽霊を観たと噂し合う。ゾッとするシーンがオープニング。ここらあたり、泉鏡花の世界だ。

 ストーリーはお孝と清葉を中心に、二人の間を行き来する二人の男、元海産物問屋の五十嵐伝吉(柳永二郎)と教師の葛木晋三(品川隆二)の織りなす人間ドラマだ。

 淡島千景が彼女の真骨頂といえるきっぷのいい芸者を、山本富士子が界隈きっての美人芸者を色っぽく演じて、二人の張り合いだけで充分楽しめるのだが、残念ながら二人の男がどちらもダメ。他にいなかったのか!と思ってしまう。二人の女性と格が違いすぎて、彼女達が芸者であっても相手にしないだろうと、どうしても思ってしまう。

 幽霊の方はどうかというとその後2回、観客をどきりとさせるシーンがあるが、決して幽霊は出てこない。最初の芸者だけが何やら心霊写真のような写し方だ。

そういうことで、「日本映画最高傑作」の評価は、淡島千景の素晴らしさを加点して、普通よりちっと上の3.6にした。

 実は若尾文子が目的だったのだが、この頃はまだまだお飾りでしかない。



(注)ここからは読む必要はありません。❌

(追記-余談)2022.11.1
このレビューを読み返しているうちに、昔の記憶が蘇ってきた。
小さい頃、家族でよく映画を観に行っていた。映画はなんでもありの状態だったが、いずれにしても両親の好みだったことは間違いない。
 そんな映画でも嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。
ところが一つだけ嫌だったのが山本富士子の映画だった。それりゃあそうだろう、彼女の色気なんか全く解るわけはないし、映画そのものが大人の映画だし、アクションもないし、で嫌だった。しかし、その頃の両親の会話から多分思い込んでいたのだろう。当時の映画女優で一番美人は山本富士子なんだと思っていた。
それで、ここからが、記録しておきたかったのだが(私の思い込みなのかもしれないが、)
日本映画界 王道の美人系譜を辿れば

原節子→山本富士子→吉永小百合→?

ではないのか。
ずっと思っていたことがふと思い出した。


2022.10.31視聴-490
kojikoji

kojikoji