がちゃん

スパニッシュ・プリズナーのがちゃんのレビュー・感想・評価

スパニッシュ・プリズナー(1997年製作の映画)
4.0
ヒッチコック作品を彷彿とさせるなかなか上手な謎解きサスペンス。
ちょっとルール違反のところもあるが、そんなことは目をつぶって最後までゴキゲンに楽しめます。

スパニッシュ・プリズナー=スペインの囚人とは、19世紀にまでさかのぼる古典的な信用詐欺のことで、本編ではキャンベル・スコットが見事に引っかかってしまう。

会社に莫大な利益をもたらす“プロセス”を開発したキャンベルは、カリブ海でそのプロセスの社長らにプレゼンして、見返りの報酬を期待していた。

社長から“プロセス”のことは絶対秘密だと言われ用心するキャンベルだったが、彼には謎の富豪スティーヴ・マーティンが接近したり、謎めいた女性や秘書までが怪しげな接近をしてくる。

スティーヴ・マーティンから、妹に一冊の本を届けてほしいという頼みを受け、ニューヨークに戻ったキャンベルは本を届けるのだが・・・

と、謎解きサスペンスなのであらすじはここまで。
この後、よく練られたマメット監督オリジナル脚本で、
物語が二転三転します。

オープニングの何気ない記念撮影、
本の受け渡しの入れ違い、
何を考えているのかわからない秘書、
突然現れるFBIと、誰を信用していいのかわかりません。

スパニッシュ・プリズナーでなぜ騙されるのか。
以下、wikipedia

「スペインの囚人」詐欺の成功の鍵は、カモに囚人の正体や詳しい状況を知られないために、「この件は秘密である」と強調し、詐欺師に対して信用させるところにある。また詐欺師はしばしばカモに対し、「あなたが選ばれたのは、注意深い調査の結果、あなたが正直であり信頼できる取引をする人間だと評判だからだ」と口にする。そして詐欺師は、囚人からのお礼のうち、自分の最終的な取り分はカモの任意によって分配されるように取引を組み立てたように見せかける。

ということを理解して観ると、物語はさらに面白くなる。

マメット監督はおそらくヒッチコックを研究しているに違いないと思われるカットがいくつもある。

手についた血を洗い流すためにトイレに入ろうとすると、トイレは掃除中であり、掃除人がキャンベルの手をみていぶかしげな表情を浮かべる場面や、撃たれそうになったキャンベルが危機一髪となったところで、関係なさげな東洋人が思いがけない動きをしたり。
(この場面までにニューヨークでは日本人が多いという伏線が張られている)
会社に張られているポスターが、『誰かがしゃべっている』と啓発めいたものだったり、ヒッチコックが大好きだった背中にナイフのようなシーンまで入っている。

まさかまさかのどんでん返しの結末まで、まったく隙のない105分です。
具体的なあらすじや場面を描くことができないのが残念ですが、
おススメ!
がちゃん

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