Balthazar

007/トゥモロー・ネバー・ダイのBalthazarのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

オープニング。イギリスMI6は007をロシア国境におけるブラックマーケットの潜入調査に派遣。そこには大量の武器と国際テロリストたちが集まっていることを確認、ロシア政府の了解を取り付け海軍艦艇から巡航ミサイル発射。ところが、商品の中に核弾頭が含まれている事が判明、巡航ミサイルは母艦から距離が離れすぎていた為自爆電波が届かず、ボンドは咄嗟に核弾頭を搭載した戦闘機ごと確保して飛び去り、初っ端から熱いドッグファイトが展開される。

ここからが本番。南シナ海(映画公開から20年近く経ってるのに、まだタイムリーな話題に聞こえる)の中華人民共和国の沿岸を航行していたイギリス海軍フリゲート「HMSデヴォンシャー」が、中国人民解放軍の戦闘機による領海侵犯の警告を受けた後、まもなく撃沈された。同時に中国人民解放軍の戦闘機も撃墜されるという最悪の外交問題が発生。
デヴォンシャーは実際に中華人民共和国の領海侵犯をしていたのだが、艦のシステムは領海から離れた公海上を航行しているものと誤表示されていて乗組員は気付かなかった。
シンガポールのMI6支局は不可思議なGPS電波が発信されていたことを掴んでいた。さらに、政府が事実関係の確認に追われている最中にもかかわらず、なぜかイギリスの新聞「トゥモロー」紙上には「公海上を航行するイギリス海軍艦と中国人民解放軍の戦闘機が交戦し、撃沈され乗組員が虐殺された」というスクープ記事が掲載された。
英中戦争勃発か。激怒したイギリス首相は艦隊派遣を命じるものの、「トゥモロー」の早すぎる記事の掲載と不可思議なGPS電波の発信に疑問を抱いたMは意見し、これを受けて首相は48時間以内の事実関係の調査を命じた。 Mはボンドを「トゥモロー」紙のオーナーであるエリオット・カーヴァーの調査に赴かせる。

「カーヴァー・メディア・インターナショナル」の総帥エリオット・カーヴァー。彼には政治的な思惑など何もない、目的はただ、歪んだ自己顕示欲と金銭欲だけだ。資本主義の悪い権化みたいな奴。
レーダーを狂わせるジャミング電波でHMSデヴォンシャーを中華人民共和国の領海におびき寄せた上に、自らが所有するステルス艦によって中華人民共和国軍機もろとも海の藻屑とし、さらに情報操作で両大国間の緊張を演出し、大きな利益を得ることを狙っている。

イギリスのメディア王でヨットから転落して水死したロバート・マクスウェル、またはアメリカのメディア王でFOXグループ会長のルパート・マードックがモデルらしい。
FOXニュースと言えば、イラク戦争で米軍の戦車に独占従軍取材を敢行して一躍有名になったもんね。
湾岸戦争の時はCNNがバグダッド空爆を独占配信したのだった。「戦争とメディア」には深い縁があるんだ。

やはり中華人民共和国側も英中衝突の原因に疑念を抱き、諜報部員にして今作のボンドガールのウェイ・リンを新華社通信の記者という形で派遣し、カーヴァーを調べていた。
ボンドはデヴォンシャーが沈んでいる南シナ海へ向かう。アクアラングしたデヴォンシャーの艦内にて、ボンドと同じく潜水調査に来ていたウェイはカーヴァーの手下に捕まってベトナム、ホーチミン市にある超高層ビルに送られる。そこはカーヴァー・メディア・インターナショナルの支局。
なんとか脱出して仲良くなった2人は“英中同盟”を結ぶ。
面白アイテムとしては、この時代からスマホで遠隔操作できるボンドカー(BMW)が登場!撒き菱スパイクなどガジェット満載。いまじゃ、遠隔・自動運転も本当に実現しちゃったからね。技術の進歩ってすごいよね。

2人はステルス艦に潜入、激闘の末、英中戦争の特ダネを独占報道し自社衛星TVの世界進出を夢見るカーヴァーの野望を粉砕。
Mによって表向き「カーヴァーは海上で事故死」ということにされた。情報操作で世界を支配しようとした男もまた、情報操作によって葬られたのだ。
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