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柳と風のcamusonのレビュー・感想・評価

柳と風(1999年製作の映画)
4.0
子供の頃は、些細なことが、当人にとっては一大事。
狭い視野での思いこみや、甘い判断も、
大人になってふり返ってみれば、いい笑い話になったりするものです。

本作品は、そんなテイストで話が進みながらも、
実は、些細なことが、ほんとに一大事じゃないですか~!という、
なんとも非合理で、不条理な世界を描き切っています。

ある日のこと、
数日前に教室のガラスを割ってしまった少年が、
担任の先生から、今日中に直さないと学校を辞めてもらう、
と言われてしまいます。

途中は省きますが、
少年はお金を工面した後に、ガラス屋に行き、
サイズも曖昧なままにガラスをカッティングしてもらい、
長手寸法が少年の身長ほどはある板ガラスを、
下端を両手に載せ、上端をあごで支えながら、
暴風雨が吹きすさぶ中、数キロ離れた学校まで、運ぶことになります。

何の罰だよ、と思ってしまいがちですが、罰とかじゃなくて、
ガラスを修理するインフラが発達していないだけ、というか、
サービスを商品として扱う概念がない世界なんですね。たぶん。
なので、買ったガラスは自分で運んで、建物にパテで固定しなければなりません。

そんなこんなで、笑い話どころか、あまりの不条理に、
後半は、歯痒いを通り越して、思わず歯ぎしりしてしまいそうになります。

1999年のイラン映画ですが、
さすがにリアルタイムではないと思われ、
作者の子供時代を、脚色して描いたものなんでしょうかね。

まあ、ここまで極端ではないにしろ、
不便ゆえに、無駄なことをやってたよなぁ~、
と昔の生活を懐かしんでみたり、
便利な世の中になったよなぁ~、
と今の生活に、しみじみと有り難みを感じてみたりするのも、
たまには、いいかも知れませんね。
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