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柳と風のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

柳と風(1999年製作の映画)
4.0
キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」をお好きな方にはとくにオススメです。キアロスタミ脚本、モハマッド=アリ・タレビ監督のイラン映画。少年がさらに高いミッションを目指します。というか、かわいそすぎて、誰か大人手伝ってあげて、もうやめていいよ、と何度思ったことか。

割ってしまった学校の窓ガラス、自分で弁償して直さなければならない少年が、強風時に、けっこう大きいガラスを運びます。見ていて危なっかしい。見てられない。

タイトルが微妙。どんな風(逆境)にも柳のように耐えるってことかしら。

弁償しないと学校いられなくなるとか、「友だちの~」同様に大人は非協力的だとか、お金持ってないとか、時間制限あるとか、天気とか、山川とか、こんなにハードル上げて、少年はミッションをクリアできるでしょうか。

この少年はハリウッド映画に出てきそうな愛らしい美少年で、転校生と楽しそうに笑う姿は、めちゃめちゃ可愛い表情するのに、一転して、苦悩と戸惑い、不安な表情に変わっていきます。それが、途中からやり遂げなければ、と凛々しくなっていき、一歩大人に近づいていきます。

だからといって、風力発電があるほどの風の強い地域、誰も大人は手を貸してあげない。

格差について描かれていました。これが隠れメインテーマだと思います。地元の産業は昔ながらのオリーブと牧畜。そこに風力発電の開発が入ってきて、既存の産業従事者の抜け出せない貧困と、資本と技術力で上を目指す可能性と対比されていました。

少年は柳のように強風に吹かれ翻弄される立場なのか、あるいは風を利用して生きていく立場になるのか。親の影響力の差を転校生の豊かな暮らしぶりを見て、社会の格差を知っていくのでしょう。

途中で通った墓地は子どもたちの写真が飾られ、若くして亡くなった子どもたちの墓地でした。それだけ子どもたちが困難な環境に面しているのだと示されていました。

また、転校生は学校ではまだマイナーな立場でしたが、少年に対しては急に強気になり、二人の力関係を少年は知らされました。転校生の父親の上司の会話も階層構造を語っていました。

ガラス屋さん、少年に軍手を渡してほしかったです。
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