TAK44マグナム

シザーハンズのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

シザーハンズ(1990年製作の映画)
4.7
もしも願いが叶うなら、誰も傷つけない手をください。


いよいよ平成最後のクリスマスですね〜🎄
それはさておき、製作25周年記念コレクターズブルーレイを購入してからずっと寝かしておいたので、メジャーな映画でありカルト映画でもある「シザーハンズ」をテレビ放映で初めて観てから20年ぶりぐらいに鑑賞しました。
ご存知、ティム・バートンがキャロライン・トンプソンと共に創造したファンタジックなラブストーリーですね。
異質な存在が善良な街にもたらす波紋、そして、一つの愛の形を描いています。
ポップな美術や、ダニー・エルフマンによる切なげな音楽がこれまた素晴らしい。

主演は、本作で映画スターとしてのスタートをきった感のあるジョニー・デップ。
ヒロイン役は、本来はボーイッシュな黒髪女子なのをブロンドのロングヘアのカツラで、活発なチアリーダーを「似合わないな」と自ら思いつつ演じたウィノナ・ライダー。
2人の気持ちが近づく場面は、どれも名場面。
氷の雪で踊り、ハサミの手のせいで抱き締める事も出来ず、切なすぎるキスを交わす・・・
永遠に溶けない氷で包んだように、いつまでも心に残ります。


広いお城にひとりぼっちだった人造人間のエドワード。
限りなく人間だけれど、両手だけが未完成のハサミのまま。
そのハサミの手は、エドワードにとって希望と絶望、そのどちらももたらすのです。

心優しく、偏見のないビル一家と一緒に暮らすようになったエドワードは、得意技を活かしてテレビに出演するほどの人気者になりますが、ある事件をきっかけに、善良だった隣人たちの態度が違ってきます。
純粋無垢なエドワードの心に戸惑いと共に芽生える、初めての怒りの感情。

掌を返したようになる街の人々は我々そのもの。
ハサミの手を「ユニーク=個性」として認める一方で、疑い始めると排除しようとする姿は、マスメディアやSNSの情報に踊らされる我々を映す鏡です。

クリスマスの夜に決定的になるエドワードへの排斥運動ですが、エドワードを怒らせたのは誰なのか。
それでも、彼の純真さに惹かれたキムの愛がエドワードを救い、物語は誰かを想う大切さを説くのでした。


どのキャラクターも素晴らしいのですが、ペグやビルの(非常に対照的ながら)偏見をもたない人間性や、職務に忠実でありながらも他者を的確に理解できる黒人警官の行動には感銘を受けますね。

そして、何と言ってもキム役のウィノナ・ライダーです。
ものすごく可愛いし、エドワードが降らす雪の中で踊る姿が美しい。
実のところ、エドワードに惹かれるのが性急で、あまり説得力は無いのですが、純な心に感化されるってのは恋する速度をあげるものなのでしょうかね。
本作のウィノナ・ライダーに「抱いて」なんて言われたら血圧が急上昇してヤバいですよ。
そりゃあ、普通の手が欲しくなります。


ハサミの手で無ければ存在できないエドワードは、所詮、社会では異端で居続けるしかなく、たぶん生きられないのでしょう。
それでも理解しあえるし、愛し合える。
たとえ傷つけてしまったとしても、いつもどこかでつながっているのです。
ティム・バートンは、「誰もがひとりぼっちではないんだよ」と言いたかったのではないかと、クリスマスイブの夜に独り寂しく鑑賞しながら思いました。


テレビ放送、セルブルーレイにて