無駄なシーンがなく、小雪と順吉の純愛のみに本筋を絞っているので三浦友和と山口百恵の演技を堪能できる。
徴兵や身分制度といった障害が二人の恋路を引き裂いていくのもベタだけど雰囲気は出ているし、小雪が戦地へ行った順吉を想って空を見上げた次の瞬間にカメラが下を向いて同じく小雪を想って空を見上げる順吉が映る……というカメラワークの妙も相まって映像に引き込まれてしまう。
鳥取砂丘が荒涼とした小雪の心象風景のように読み取れるのも詩的で、シンプルに出来が良い映像が楽しめるのと、行間を想像させるような時系列の移動も文学的で世界観に奥行きがある。
余韻と情緒溢れるラストシーンも記憶に残る佳作。