ばーとん

東京上空いらっしゃいませのばーとんのレビュー・感想・評価

東京上空いらっしゃいませ(1990年製作の映画)
3.8
死んだと思ったら奇跡が起こって、人生ちょっとだけやり直す女の子のハナシ。本来の居場所を追われ、漂泊民化(家出)する子供たちを何度も撮ってきた相米慎二が、死という究極の家出を描く。しかしその割りに過去のどの作品と比べてもこの映画には軽みがある。ファンタジー色が強いせいだけじゃない、バブル時代の軽佻浮薄な空気を反映した軽さだ。

中井貴一と毬谷友子の奇妙な関係が、牧瀬里穂とのおかしな三角関係に発展するまでのトレンディ・ドラマ感。オシャレなジャズバーでトロンボーン吹く中井、夜の街で恥ずかし気もなく花束を贈り合う二人、等いちいちバブリー。バーガーショップの女の子の「25くらいまではちゃんと遊ぶの」のセリフ、モラトリアムの感覚が物語に漂う。「わたし今がいい!」と叫ぶ牧瀬の現状肯定感の高さ。

現在と違って、生きてることが楽しくてしようがなかった時代、ゆえの切なさ。そして好きな男とキスしたら安心して逝っちゃうってありがちな展開。ラストはキャプラオマージュやってて、死んじゃったけど「素晴らしきかな人生」てところか。

湿度の高い相米映画が好きな人は、この映画の軽さに戸惑うかも。彼の映画中でも異色で、傑作の部類とは思わないが、らしさは随所にある。屋形船のシーンは素晴らしい。牧瀬が段ボールの人形になるとこも可愛い。
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