海

東京上空いらっしゃいませの海のレビュー・感想・評価

東京上空いらっしゃいませ(1990年製作の映画)
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わたしのしたいことからはじめはなくなって、次にあなたにしてほしいことがなくなるんだろう。わたしはあなたの手をひらいて言う。あるべき姿なんて放して、辞めたくなったら仕事を辞めて、くだらない冗談で一晩中わらって、言葉が心に追いつかず、からだが衝動に追いつかず、いのちの意味がわからなくなったら、ただねむって、この静かな、やわらかい光の漲る寝室でともにねむって、ゆっくり、わたしたちの、いのちのありかをみつけたらいいよ。あいの話をするとき、わたしはかならずそう、約束なくやさしくて、さわらなくあたたかくて、ひとじゃなく夢みたいで、わたしはそうなりたいから、あいをそんなふうに話す。あいのようになりたいから、あいのようにはなす。日が暮れて、川が流れるのを聞いて、海が波うつのを感じて、どこからか風がわたしの頬を撫でにやってきただけで、すべてやりなおせるような気がする。音楽に、きこえることは必要だろうか。景色に、みることは必要だろうか。わたしとあなたに、感じることが必要だと知ってる。いままでわかったつもりになってきたことをどうしてわたしたちは順番に忘れていくの。指のあいだを草がくすぐる、わたしは思い出す、永遠につづいてほしかった夜明け、永遠につづいてほしかった夜明け。睫毛のあいだを夜の影が透く、わたしは考える、あなたへのわたしのあい、あなたへのわたしのあい。
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