猫脳髄

ゾンビ伝説の猫脳髄のレビュー・感想・評価

ゾンビ伝説(1988年製作の映画)
3.2
ウェス・クレイヴン版「カサブランカ」あるいは「ハバナ」(※)。デュヴァリエ父子の独裁末期のハイチで、アメリカの製薬会社から依頼され、蘇った死者ゾンビの謎を探索する人類学者ビル・プルマンが遭遇する怪異とロマンスを映し出す。

ブードゥー教に由来するゾンビ・パウダーで仮死状態に置かれた人びとをゾンビと定義し、プルマンはそのパウダーの入手を目的とする。現地の女性医師キャシー・タイソンとのロマンスを絡めながら、呪術に長けた秘密警察のボスと対峙しながら、混乱するハイチからの脱出を試みるという筋書き。ノンフィクションベースらしいが、それは物語の強度を高める試みに過ぎず、割とどうでもよい。

ホラー表現を用いてはいるが、基本的には幻想・ファンタジーに属する描写になっている。現地の魔術師との交流や秘密警察との対決がストーリーの主軸で、恐怖は味つけに過ぎない。クレイヴンは最後までジャンル作家ではあったものの、当のジャンルに対して冷静な(よく言えば相対的な)見方をしているように感じる。多くの作品を観ているわけではないので印象論に過ぎないが、やや特異な位置づけのつくり手であることは意識しておきたい。

※シドニー・ポラック「ハバナ」は1990年製作なので実は本作の方が早い
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