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また逢う日までのkuuのレビュー・感想・評価

また逢う日まで(1950年製作の映画)
3.7
『また逢う日まで』
製作年 1950年。上映時間 111分。

社会派の巨匠・今井正監督が岡田英次、久我美子主演で描く恋愛映画の傑作。

あまりにも有名なガラス越しのキスシーンは日本映画史に輝く名場面として今なお語りぐさとなっている。
深く愛し合った二人が戦争という時代の波の中で否応もなく引き離される姿を通して戦争の非人間性を静かに力強く訴える。

昭和18年。戦争まっただ中の日本。
空襲警報の鳴り響く地下鉄のホーム。
ここで三郎と螢子は初めてであった。
狂気の時代にあって人間的な心を通い合わせた二人はたちまち恋に落ちるのだったが。。。

嗚呼、戦争中の若い男女は、こないに刹那的にセツナイ思いで生きていたんかぁ。
秘めることなくほとばしる愛のかたちを知り、深く感動したぁ。
鳴咽ってまではいかないまでも、心は逝っちまった。
戦争の時代に押し潰された
青春の悲しみ、
痛みを、
こんなに純粋直に感じた作品は数少ない。
戦争そのものを露骨に出さずに、こないに戦争の無さを描いた作品もまたあまりないかな。
今作品は、ロマン・ロランの小説『ピエルとリュース』を下敷きに、水木洋子が脚本を書いたそうです。
戦争に行く直前にあっても肉体的に結ばれることのない男女がかわす、窓ガラス越しの接吻シーン。
嗚呼。
名場面やと思うが、原作にはないオリジナルだそうです。
これによって今作品は、ロマン・ロランと並んだとは云い過ぎかな。 若い主人公の男女を、当時まだ新人やった岡田英次と久我美子がういういしく演じてました。
重厚に男の兄ちゃんを河野秋武がストイックに軍人らしく、女の母ちゃんには杉村春子が、小津物とはうって変わって戦時下の市民をつつましく演じてました。
戦中の日本が、いかに小市民的世界と、軍国主義的大義の世界の二つに分かれていたかを描いてて、社会性と詩情性をあわせて持つ、 今井正監督の特徴が十二分に出た作品なんかもしれません。
映像もじつに流麗やった。
今作品が次の世代に受け継がれる文化であって欲しい。
反戦映画とか、メロドラマに反戦を織り込んだ映画とか、評論家ジャンルでくくりたくない作品でした。
戦後まもない初公開に見た人と、今になって見た人とでは思い入れが違っ てくるのはやむを得ないことかもしれない。
しかし、何より、戦争の追体験をしたいということと、まだ知らなかった若い男女の悲劇的な青春に、胸を締めつけられる思いを味わえたこと、年齢とともに、泣くことによって浄化する部分も増えてること感じた。
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