櫻イミト

また逢う日までの櫻イミトのレビュー・感想・評価

また逢う日まで(1950年製作の映画)
3.5
キネマ旬報ベスト・テン第1位。終戦五年目に作られた反戦恋愛映画。岡田英次(当時30歳)の出世作。監督は後に独立プロ運動1番手となる今井正。原作は仏のノーベル賞作家ロマン・ロラン『ピエールとリュース』(1920)。

昭和18年、戦時下の東京。徴用が近づく学生の三郎(岡田英次)は空襲警報が鳴り響く地下鉄ホームで美術学生・螢子(久我美子)と出会う。軍国主義的な父と兄に嫌気がさしている三郎は芸術の道を志す螢子に惹かれ、日ごとに2人の純真な恋は深まる。しかし戦争の影が2人を覆っていく。。。

儚く質素な恋の姿に胸を打たれた。現在となっては定番すぎる悲恋物語だが、日本映画では本作が原点なのかもしれない。

有名なガラス越しのキスシーンは、それまでに積み重ねてきた真摯な恋の結実を感じて涙が出た。中盤にして本作のクライマックスだったと思う。

主演の二人をはじめ映画全体から漂う生真面目さとインテリジェンスは、現代日本では再現不可能だろう。再現しようとしてもパロディかネタとして扱われそう。ストレートな”清らかさ”を目の当たりにして、心が洗われる思いがした。

※戦後初の反戦戦争映画「きけ、わだつみの声」は同年の作品。
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