荒野の狼

ミスター・アーサーの荒野の狼のレビュー・感想・評価

ミスター・アーサー(1981年製作の映画)
5.0
1981年のラブコメディで、主題歌のニューヨーク・シティ・セレナーデ(Arthur's Theme (Best That You Can Do)"が大ヒットした97分の映画。原題の“アーサー”は、ダドリー・ムーア演じる主人公の大金持ちの名前だが、邦題は、何故か“ミスター・アーサー“。監督と脚本を担当したスティーヴ・ゴードンは翌年に死亡しており、唯一の作品となった。軽妙なコメディで、ムーアとヒロインのライザ・ミネリとの恋愛、執事のジョン・ギールグッドとの友情を軸に話が展開していく。
主題歌に惹かれて、甘くせつない映画を期待した人には、いきなり冒頭で、酔っ払ったムーアのヒステリックな笑いをバックに流れる主題歌の使われ方に、最初は失望するかもしれないが、ここはじっくり歌詞を味わってから映画の鑑賞をスタートすることを薦めたい。
DVDでは英語の歌詞は、字幕のLanguageを英語にしてもでてこないが、Closed Captionにすると見られる。歌詞の冒頭は、Once in your life you'll find her Someone who turns your heart around(一生に一度だけ人は恋に落ちる)で、サビはWhen you get caught between the moon and New York City(月とニューヨークの間にとらわれたら)なのだが、この映画では、一度も”月”は撮されない。ところが、夜に馬小屋で(月明かりのような照明のもと)会話する、ムーアとミネリの次の会話で、主題歌と映画はつながり、単なるコメディが、せつないロマンスに変わる。

ミネリHave you ever been in love?
ムーア No. You?
ミネリ No. But, when I was little, I thought the moon followed me. I would walk and I thought that the moon went anyplace that I did. Oh, I know it’s silly, but I was only eight years old. I thought it meant something special was going to happen to me someday. So, I’ve waiting. Everyday I’ve been doing my hair and washing my face.
ムーア Can I kiss you?
ミネリ Please.

この映画は、ユーモアとギールグッドの演技が評価されることが多いが、上記のシーンのミネリに魅力を感じ、共感する人は多いのではないか。二人の仲を取り持つのが、老いた執事のギールグッドなのだが、彼のセリフの“I want to be younger.”の意味するところが納得される主題歌を裏切らない映画といえる。英語は比較的平易で、字幕の英語は、字数が少ないので、慌てずに読める。
荒野の狼

荒野の狼