Cisaraghi

鯉名の銀平のCisaraghiのレビュー・感想・評価

鯉名の銀平(1961年製作の映画)
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Amazon Primeで見邦題の雷蔵映画、目ぼしそうなのは概ね観てしまい、残るは苦手系ばかり。これもヤクザものを描いた映画で期待はしていなかったが、思ったよりよかった。特に雷蔵さんのファッションと口跡。白黒映像も絵になってる。腹巻き+スリムなブラックパンツ(股引)、その上に薄手のボレロみたいな半袖シャツを引っ掛けると50~60年代ファッションぽくて、それプラス月代・丁髷ってなんか斬新!このままウェストサイドストーリーみたいに踊り出しそう。いかにも船大工の若い衆というはしっこさ。

いつも女に追っかけられている雷蔵さんだけれど、これは珍しく自分から惚れ抜いて叶わない役。苦く切ない、胸を打つさすがの演技だった。もしかして勝新と結婚した相手役の玉緒ちゃんが好きだった?と邪推したくなるくらい。

銀平の長セリフがよかったなあ。特に海を背景にしてシルエットが語る場面。表情が暗くてよく見えないのでセリフだけに集中していたけど、聞かせるんだ、これが。上手いなぁ、この口跡の見事さはさすがに歌舞伎出身だけあるのかなぁと思った。モノクロの海が煌めいて、美しい、いい場面だった。雷蔵さんの台詞回しとか役作りは、人間一人一人顔が違うみたいに役柄によって全部違うのがホントすごい。

あと、音楽がドラマを引っ張っていたのがよかったな。アコギやエレキを使ったラテン風だかアラブ風だかよくわかんない音楽だけど。

ヤクザものを堅気と対比させ、ちゃんと社会悪として描いているのもよかった。少なくともここでは警察的な組織が機能しているようだった。

鯉名とは伊豆の下田を流れる川の名前らしいが、海の町下田らしさが随所に見られる下田のご当地映画と言えるだろう。実際にどこまで下田でロケしたのかは不明。

40
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