佐藤克巳

簪(かんざし)の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

簪(かんざし)(1941年製作の映画)
4.5
清水宏監督が、名作「按摩と女」を土台に山中の宿の夏休みのくつろいだ時間を、子供横山準の宿題日記に綴った詩情溢れる人生模様を編んだ傑作。蓮華講団体客が下部温泉に宿泊し去った後、長期滞在者の一人で温厚な傷痍軍人笠智衆が、露天風呂で簪を踏んで足を負傷する。気難し屋作家斎藤達雄は、宿屋主人坂本武にクレームをつけたが、笠は情緒的イリュージョンを楽しむ。簪の持ち主で東京の芸妓田中絹代が、謝罪にやって来て笠の介抱に勤しむ。老人河原侃二に連れられた横山と弟は、笠の歩行訓練の手助け、気弱な妻頼みの夫日守新一も、気が気ではない。一方斎藤と河原は、昼間はいつも囲碁で、夜は大いびき。田中の連れ川崎弘子が出迎えに来たが、田中は、肌も焼け汗を流す日常に満足し宿に居着く。笠も治り夏休みも終わり、みんな帰郷する。やがて笠からの誘いの葉書に、田中は物思いに耽り乍ら川辺の散歩を始めた。
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