1958年大映作品西山正輝監督の「江戸は青空」の為に、山本周五郎のヒューマニズム溢れる原作を夏十さんが生前肩肘張らずに書き下ろした脚本を、市川崑得意の「銀残し（シルバー・カラー）」で描いた作品。
モノクロ以上の重厚さで、貧しい長屋をつつましく描く「銀残し」も凄いが、やはり岸恵子の淡々とした演技が素晴らしい。
この人は、小津の「浮雲」での不倫OLの演技や、「約束」の懲役犯の演技もそうだったが、重たい役を非常に軽くオシャレに演じられるので、市川崑の描く世界にピッタリとハマっていた。
出てくる人全員良い人で、落語の人情噺を聞いているようで、非常に感動した。たまには、こんな良いことしかない映画もいいだろう。
明朝体タイトル、銀残し、横並列の台詞、必殺「袖残しふすま」など、一瞬で市川崑だとわかるファンには嬉しいお約束だらけで、こんな個性的な映画を撮るのは、私の知っている限り、あとは小津ぐらいしか無いだろう。
心がほのぼのとした。楽しかった。
