くりふ

黄金時代のくりふのレビュー・感想・評価

黄金時代(1930年製作の映画)
3.0
【ゲームの無規則】

アマプラにて。『アンダルシアの犬』を久しぶりに再見したので、毒を食らわば皿までもシリーズとして、こちらも。

まず、この時期にここまで、トーキーを武器として使っていたのか!…と改めて驚く。終盤への展開なんて「トリスタンとイゾルデ」が流れるから、耳からの継続意欲がすこし沸く。

ブニュエルの、徹底した反骨精神には敬意さえおぼえますが、やってるコトは今見れば、相手にウンコ投げるようなもんだ。シュルレアリスムってそういうコトだっけ?

ご本人としては、明確な敵に戦争を仕掛けたつもりだったのか。或いは多感な時期を、戒律で縛るジェスイット派の学校で奪われたものへの、復讐だったのか?

苗床は『アンダルシアの犬』同様、無意識らしいが、映画という武器をとおして、濾過した本能をむき出している。夢で見たことの映像化ではなく、完全に、攻撃に移っていますね。だから世間の一部からも、猛反撃を食らったわけだし。

“眠りながら怒る人”みたいな感じもするけど。主人公の男がまさにそれ。夢遊怒者。一方ヒロインは、その男がスイッチとなる、隠れニンフォマニア。割れ鍋に綴じぬ蓋。可笑しい。

ヒロインは円やか美人なのに、当時の限界に挑んでくれるから大好き!男が出会う前は、彼女への妄想全開となるので、セクシーアイコンとしても膨らんでくれます。ある広告画像を自慰映像に脳内変換してしまうギャグ、はヒロインがそうしているように思ってしまう。

本作の男女は、途中で水をぶっかけ離された犬のように、インタコースに至れず欲求不満を募らせますが、代わりに指と唇でセックスするんですね。かえって、こちらにまで体液が迸るようで、心を背けたくなる生々しさがあります。

ダリとはケンカ別れしたようで、ダリ絵画にあるグラマラスは、本作ではほぼナシ。何度か出てくる、山高帽男とセットになるヘンテコ画などは、むしろマグリットを連想。んで全体、上品にも響く超現実の画と、お下劣コントが同居している。そのギャップが味といえば味。

当時、涜神描写が問題だったようですが…最近もフランスで、未成年の犠牲者21万人以上というカトリックの性虐待が暴露されました。100年近く前の本作に捨てちゃえ!と突きつけられた時点で、余計なモノはとっとと、そうすべきでした。これは反骨でなく正論だ!w

全体、当時の映画技術のせいでコントにも見えるが、いまリメイクしたら、まったく違った響き方をしそう。それこそ、ダリの豊饒さがテクニカルに再現できそうだけれど、ブニュエルはもう独り立ちしていて、映像遊びはするつもり、なかったでしょうね。

あ、そういえばヒロインは、“マグマのアナルを持つ女”でもありますね!やけどに注意!

<2022.9.26記>
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