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フルメタル・ジャケットのYYamadaのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
3.6
【戦争映画のススメ】
フルメタル・ジャケット (1987)
◆本作で描かれる戦地
ベトナム戦争 (フィクション)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □□□■□ アクション

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・米海兵隊3092小隊の新兵たちはいじめ、侮辱が横行する環境下、過酷な訓練を強いられる。人を殺すことを教え込まれ、人間性が奪われていった新兵のひとり、パイルはついに精神を病み自殺してしまう。
・その後、それぞれベトナムへ送り込まれた新兵たちだったが…。

〈見処〉
①名匠キューブリックが描く、
 生々しき「ベトナム戦争」——
・『フルメタル・ジャケット』は、1987年に製作された戦争映画。監督は『2001年宇宙の旅』の名匠スタンリー・キューブリック。
・タイトルは、弾体の鉛を銅で覆った「完全被甲弾」を差す。
・原作は1979年に執筆されたグスタフ・ハスフォードの処女小説「短期応召兵(ザ・ショート・タイマーズ)」。
・上映時間116分の本作の前半パートは海兵隊訓練所で新兵が受ける過酷な訓練、後半パートは彼らのベトナムでの行動が描かれる。
・本作の舞台は、アメリカ国内とベトナムであるが、全編イギリスで撮影された。原作の後半が省略されたこともあり、ベトナム戦争を扱った映画には珍しくジャングルでの戦闘がなく、市街戦が描かれている。
・出演は『メンフィス・ベル』のマシュー・モディーン、『Marvel デアデビル
』のヴィンセント・ドノフリオ。

②映画史に残る「言葉の暴力」
・本作前半部で描かれる兵隊訓練所の場面は、原作小説では全体のわずか1⁄5程度、配給会社による映画の予告編にも登場しないほどの小さなシーンであったが、本シーン撮影の演技指導のために招いた、米軍海兵隊の元訓練教官R・リー・アーメイのあまりにも圧倒的な存在感が、作品全体のコンセプトに大きな影響を与えることになる。
・キューブリックは撮影直前に、ハートマン教官役に急遽アーメイ自身を演じさせることを決断。当初ハートマン役を予定していた俳優は、交代を不満に思いながら、代役の輸送ヘリのドア・ガンナー役を受け入れた。
・撮影中においても、アーメイの発するセリフの大半は猥褻で下品。新兵本人ばかりか、出身地や家族まで徹底的にこき下ろす彼の罵詈雑言に、出演者が怒り出すこともあった。
・なお、キューブリックは、公開前に自身の作品の翻訳チェックを行うことで有名であるが、本作においては、戸田奈津子氏による、アーメイの扮するハートマン教官のセリフを穏当に意訳したため「汚なさが表現されていない」として同氏の翻訳を却下。急遽、他の翻訳家に対して直訳を要求した結果「まるでそびえたつクソだ!」など奇抜な言い回しが話題となり、さまざまなパロディが登場した。

③結び…本作の見処は?
暴言は銃よりも強し
◎: 本作のクライマックスは、前半部の新兵への訓練シーン。精神破壊が必須なほど凄まじい言葉の暴力により、ヴィンセント・ドノフリオが演じる「微笑みデブ」が追い詰められていく様は、映画史に残る。
○: 後半部の戦火のシーンでは、スローモーションを駆使。兵士の死をリアルに描いた描写は、後の戦争映画にも影響を与えている。
○: 1988年8月の任天堂のテレビCM「ファミコンウォーズ」でパロディとして使われた、新兵の訓練歌「ミリタリーケイデンス」、疲弊した兵士が合唱する「ミッキーマウス・マーチ」、エンド・クレジットで使用されたローリング・ストーンズの「黒くぬれ!」など、劇中で使われている音楽が印象的な作品。
▲: 前半⇔後半のストーリーのつなぎが弱く、本来メインとなるべきの戦地シーンの印象は弱くならざるを得ない。
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