こーた

フルメタル・ジャケットのこーたのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
4.1
所謂戦争映画では若者たちが無惨に散っていく様や悲惨な絶望が描かれるが、本作は戦争に至るまでの兵士のプロセスを丁寧に描いていると感じた。
普通の市民が頭を刈って数週間で立派な殺戮者になる。そのために軍隊的な上下関係や忠誠心を叩き込む。気が狂うものも当然いる。デブ君が生まれ変わっていくのは名シーン。一度上官が戦死すれば今度は素人がその場で指揮を取り、無防備な判断ミスも犯す。
そんな、一般市民が国家の指揮の下、人殺しに興じていく中での呆気なさ、無意味さ、狂気が描かれている様に感じる。ラストのシーンはまさにそれで、なんで俺たち殺し合ってるんだ?と死にゆく少女を挟んで疑問を持つジョーカーと復讐心に燃えるアニマル、快楽に浸るラフターマンと色んな心境を抱えた兵士たちが囲むから緊迫感がすごい。
ラフターマンがすっかり変わってしまって悲しかった。ああいうタイプは調子に乗って早死にしてしまうので、そういう善人が人殺しを境に内面に狂気を抱いてしまうのも恐ろしいところ。
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