春とヒコーキ土岡哲朗

フルメタル・ジャケットの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

戦時の、人の心がパンクしていくのを描いた作品。

主人公たちが入隊のために坊主にするところから始まる。散髪屋で髪を剃るというワンアクションで戦争に放り込まれてしまう、カジュアルさが怖い。そこに大きな関門はなく、気づいたら人は戦争に巻き込まれている。

ハートマン軍曹がインパクトありすぎて、笑ってしまった。いきなりそんなディープな状況を延々と見せられ、気づいたら映画に入り込んでいた。

そして、訓練中にイジメが起こる。怯えている者がさらなる弱者に責任を押し付けるための行動。人間の生命力が全て「戦闘本能」に無理やり変換される場所。

狂った「ほほえみデブ」によるまさかの教官殺しで、前半が幕を閉じる。
そして軽やかに後半へ。そのギャップこそ、人の死や悲しみを無視して進んでいく世の動きのむごさ。

いよいよ戦場へ。人を殺して、英雄的な笑顔を見せる主人公たち。そこからノリノリなBGMで闊歩。
狙撃手の少女が登場した瞬間の、緊迫。彼女も戦争によって狂ってしまった数多い人間の一人。主人公たちがそうではないように、敵もまた、怪物などではない。普通の暮らしをしていいはずの、人間同士。そんな少女をも、自分たちが生き残るために殺すほかない主人公たち。嘆かわしいが、戦争はまだ続く。ラストカットは、ミッキー・マウスマーチを歌って進んでいく主人公たち。祖国のための絆を深めて歩いていく。戦争という破綻した道に疑問を持つ自分の理性を無視していく。