このレビューはネタバレを含みます
奇才、キューブリックが手がける、ベトナム戦争を描いた作品。
◼️複数のシーンで鳴る音の正体
作中に何度か、同じ音が流れます。
それは水がポタッポタッと落ちるような音です。
この音は一体なんなのでしょうか？
私が考えるに、この音は「報復」や「復讐」を意味しているのだと思います。
まず最初にこの音が流れたのは、軍学校時代、ある1人の訓練生の出来が悪く、連帯責任で皆がしんどい目に遭っていた時です。
夜中、彼らは不出来な訓練生に報復するため、全員で殴りつけます。
その際、合図のようにしてあの音が流れてきます。
次にこの音が流れてきたのは、軍学校の最終日でした。
いじめに遭っていた訓練生は、異様な厳しさで日頃苦しめられていた鬼軍曹を射殺、その後自らも命を断ちます。
そしてラストのシーン、仲間を殺された報復として、ベトナム人女性のスナイパーにトドメを刺す際も、あの音が流れていました。
いずれも、誰かが誰かに復讐、報復するシーンで流れています。
これは暗にキューブリックが、復讐は復讐を産み続ける、負の連鎖を描いていたのではないでしょうか。
そして人は、その連鎖から抜け出せないのだ、とも。
作品全体のイメージからは、反戦といったメッセージは強く描かれていません。
むしろ陽気で、楽観的な若者たちが明るく描かれています。
その明るさと、実際に戦場で起きていることのコントラストが印象的でした。
