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フルメタル・ジャケットのhasseのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
3.6
演出4
演技4
脚本3
撮影4
音楽3
照明4
インプレッション3

前半パートの鬼教官ハートマン軍曹が放つ銃撃のような淀みない罵詈雑言は、もはや文学的ですらある。
新兵たちが向かい合って立たされ、爪の検査のために腕をつき出した列の中を闊歩するハートマンの画は狂気じみている。その後の微笑みデブことレナードの失態で皆が腕立て伏せをさせられる中、本人はドーナツを食う画もまた狂気とそして滑稽さが合わさって滲み出ている。

後半パートは、海兵隊報道部員のジョーカーが、これまでカメラや取材を通して体験してきた戦争に、生身の身体で入り込んでいく過程が描かれる。ジョーカーは、道中、女子供も躊躇なく殺すドア・ガンナーや1日に10回も自慰にふける男等、たがの外れてしまった人間に出くわす。

キューブリック監督は、この映画が「反戦映画」と呼称されることを毛嫌いしたそうだが、確かにそれは尤もなリアクションだろう。この映画は戦争という「日常」に満ち満ちている狂気を描くこと、そこに執着した戦争映画なのだから。
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