Mikiyoshi1986

恋ひとすじにのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

恋ひとすじに(1958年製作の映画)
4.0
9月23日はヨーロッパを代表する女優ロミー・シュナイダーのお誕生日。
生きていれば今日で79歳に。

ドイツで絶大な人気を誇っていた彼女が初めてフランス映画に出演し、
無名の新人俳優アラン・ドロンを一躍有名にした悲恋ドラマ「恋ひとすじに」

本作は舞台女優であったロミーの母親がかつて主演したドイツ作品のリメイク版でもあります。
当時19歳のロミーがたまたま雑誌で見かけたフランスの若手俳優アラン・ドロンを相手役に指命したことがきっかけで、
二人のロマンスは言葉の壁を越え現実のものへと発展しました。

男爵夫人との不倫関係に見切りをつけたい若き少尉フランツをドロン様が好演。
その圧倒的な美しさは既にスターの貫禄を漂わせます。
一方、フランツの前に現れたオペラ歌手志望の少女ロミーことクリスティーン。
二人の熱烈な恋は大変瑞々しく、優雅かつ無垢な装いは20世紀初頭のウィーンをより華やかに彩ります。
しかし、清算し切れないフランツの過去はやがて二人の運命を翻弄してゆくことに…。

ドロンのデビュー前からの親友JCブリアリもフランツの友人役で出演!

これを機に同棲から婚約にまで発展した二人の大恋愛は残念ながら稔ることなく、
ドロンはスターダムの階段を着実に登ってゆき、ロミーと破局した翌年にはナタリー・ドロンと結婚。

一方のロミーは公私共に辛い時期を経験することになるわけですが、
見事カムバックを果たすきっかけとなったのは元彼ドロンが相手役にロミーを指命してきた「太陽が知っている」でした。
これには当時離婚間近だったナタリーへの当て付けも多少はあったのかも知れませんが、
自分にスター俳優の道を拓いてくれた恩返しと苦境のロミーに宛てた助け船の意味合いは大変大きかったように思います。
さすがは"サムライ"。
"仁義"の男ですねぇ。

43年という短い人生の間にもドロンは常にロミーを気遣い、
巨匠ヴィスコンティ監督と引き合わせ、幾度となく共演を果たし、ロミーの愛息が事故死した時は葬儀の手配をするなど、弱りきった彼女にとってドロンは相当な心の支えになっていたのかも知れません。

そんなドロンも次回作で俳優業の引退を宣言し、彼が永年愛した伴侶ミレーユ・ダルクも先月鬼籍に入られました。
こうしてひとつの時代が終わってゆくのだと思うと、なんとも惜別の情を禁じ得ない次第です。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986