シズヲ

西部開拓史のシズヲのレビュー・感想・評価

西部開拓史(1962年製作の映画)
3.6
新天地を目指した開拓者一家の旅路から始まる西部開拓の歴史。開拓初期、ゴールドラッシュ、南北戦争、鉄道開拓、終わりゆく銃の時代……親子3代の移り変わりを軸に、半世紀にも渡るフロンティアの歩みが描かれた叙事詩的西部劇。ヘンリー・ハサウェイ、ジョン・フォード、ジョージ・マーシャルがそれぞれ監督を務めるという豪華ぶりに脱帽。出演者もジェームズ・スチュワートやデビー・レイノルズなどを始め、古今東西の名優達がゴロゴロと出てくるので凄まじい(ジョン・ウェインが“ちょろっと出てくる程度の役どころ”として顔を見せる贅沢ぶりだ)。

スケールは大きいものの、全体的には“大作”というよりも“連作”といった印象。確かに開拓者一族が狂言回しとして時代を接続しているものの個々の話は独立性が強く、良くも悪くもこじんまりと纏まっているのでドラマ的な深みは思ったより微妙。当時の映画ではよくあることだけど、甘ったるいメロドラマに走りがちなのは相変わらず乗り切れないところだ。記憶に残るようなカットもそんなに多くはないのが惜しい。

それでも映画館での上映に特化したであろう大画面のシネスコは印象的。複数のカメラを使っているのか、立体的な横長の映像となっているのが面白い。過酷な激流下りやインディアンVS馬車隊の疾走、南北戦争での激戦や列車上での強盗一味との対決など、ダイナミックなカメラワークを活用したスペクタクルなシーンはいずれも迫力がある。個々のエピソードには然程目新しさは無いけれど、それ故に西部劇というジャンルの完成ぶり(そしてそれを成し得たジョン・フォードら巨匠たちの手腕)を改めて思い知らされる。

1962年といえばケネディ大統領暗殺事件やベトナム戦争への本格的介入などを間近に控えている頃であり、ある意味でアメリカが無垢なままで居られた最終盤の時期めいている。そういう意味で、アメリカという国の開拓を前向きに描いた“最後の夢”である本作は半ば西部劇の『アメリカン・グラフィティ』みたいな味わいがある。
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