幽斎

パッセンジャーズの幽斎のレビュー・感想・評価

パッセンジャーズ(2008年製作の映画)
4.0
当時「シックス・センス」のパクリとか、伏線が雑すぎると不評で全米興行は2週間で打ち切りと、散々だった。翌年日本で公開され「アメリカも結構節穴だな」と思って観たのをハッキリ憶えてる。チョッと古い作品なのでブログからfilmarksに上げるのを躊躇いましたが、本作の名誉の為にレビューします。完全ネタバレなのでご注意下さい。

機体の大きさから推定100名近くの乗客の内、この世に未練が残っているのが登場人物と言う事に成る。セラピーに来なく為った人は、自らの死を受け入れる事が出来た人。つまり物語の舞台は、死を受け入れられない人が現世との狭間で彷徨ってる場所と言う事が分る。上司が「来ない」ではなく「消える」と語っており、不自然と思った私はここでオチが読めました。

主人公に付き纏うのは機長。彼は事故の瞬間は操縦室に居なかった。離婚問題を抱え精神が病んでた彼は、自らを責め彷徨っていたが、彼女に話をした時、死を受け入れ消えて行った。セラピーに来た人は其々が死を悟り消えて行ったのだ。

「やり残した事」と言うワードが何度も出る。逆説的に言えばクリアすると次に進む事が分る。主人公も姉との関係、仕事への自信、そして恋愛が後悔だと語る。それを既に亡くなってる人の力を借りながら前に進んで行くのが映画の本筋で、最後に恋愛としてエリックが登場する。彼は機内で彼女と知り合い運命を感じたが、再会の約束は果たせないままだった。

主人公が彼の家を訪ねた時に、新聞紙が飛んでくる。随分と大袈裟に驚くなと思ったが、冒頭の機内描写でも意味ありげに新聞は出てる。これは機内が爆発した時に飛んで来たからだ、ラストにその描写も有る。お姉さんに連絡が着かないのも不自然な描写だが、お姉さんは生きており、死後の世界に居る主人公が会えないのは当然なのだ。エリックについては、車に弾かれないシーンで分る。

Anne Hathaway、綺麗で可愛くて上品で完璧ですね。私的には彼女よりも作品の肝はエリック役のPatrick Wilsonだと思う。良い人をやらせれば天下一品だが、影の有る雰囲気もカッコいい。彼は苦労人で舞台俳優→テレビ俳優→映画俳優と階段を昇ってきた。この3段階には厳然たる壁が有り、日本では考えられないヒエラルキーが存在する。

ラストで2人は船に乗っていた。飛行機から船へと乗り換えた描写は、2人が死を受け入れ向こうの世界へと旅立つ船出なのだ。この死生観はアメリカよりも日本人の方が受け入れ易いのかも。そして墜落シーンがプレイバックされ、ホワイト・アウトする。とても美しいラスト・シーンだった。

一言で言うなら、ロマンティック・スリラー。「人生って短くて切ないな・・」ラスト・シーンで心が温かくなるスリラーを初めて観た。絶対2度見したくなる作品、低評価が未だに理解できない。怖い映画が苦手な方でも大丈夫、特に本当の恋が分る大人の女性に見て欲しいですね。
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