よしまる

白昼の死角のよしまるのレビュー・感想・評価

白昼の死角(1979年製作の映画)
3.3
 角川春樹プロデュースだけれど角川映画にあらず。れっきとした東映による東映らしい映画なところが良くも悪くも。

 未読の原作はすごく面白いらしい。2時間半の長尺をもってしても原作の良さを生かしきれてない気がしていて、詰め込みすぎでテンポはあまり良くなく、ちと長く感じてしまう。

 冒頭、学生ながら金融会社を興してボロ儲けをしていた我が愛しの岸田森の焼身自殺というインパクトデカすぎ案件から始まる。吹き替え無しで本人が燃えている。すげ〜。

 その会社の残党である夏八木勲が主人公。あの手この手で稼ぐ悪漢を演じているのだけれど、ぶっちゃけていうとバイプレーヤー向きで主役としては華がない。演技の上手い下手ではなく、身体から滲み出る雰囲気が、当初予定しながら実現しなかった渡哲也や松方弘樹とは異なる。
 例えば、違法のギリギリを攻める天才的頭脳プレーをする顔というより、銃を突きつけて力技でなんとかする顔にしか見えない笑

 血も涙もないやり方で金をせしめていく主人公。そのために犠牲となる人があまりに多く、そして最後には本人が追い詰められていくというサスペンス感はいかにも東映って感じで無茶苦茶だけど面白い。

 優作と遊戯シリーズを作っていた村川透が突如として1つ桁が違うバジェットで、大御所俳優も使いまくりで手がけている。
 千葉真一、室田日出男、丹波哲郎、天知茂など錚々たるメンツがチョイ役で並び、島田陽子も大胆な濡れ場…いや、大胆は嘘だな、ほとんど茶釜に隠れて見えないw
 まあとにかくこの時代の邦画は役者見てるだけで楽しいからいいやw

 この手の物語は主人公が自滅して終わるケースが多いのだけれど、これは違う。ダウンタウンブギウギバンドの主題歌「欲望の街」に乗って去りゆく夏八木勲、やはり暑苦しい。
 それを都会的で洗練されたふうに見せてくれているのが、村川監督との不動のコンビ、仙元誠三さんのカメラ。ただ、最後に殺された人々が化けて(?)出るシーンはさすがにちょっと笑ってしまった。あそこなんとかしてもらえたらもう少し評価も高かったろうに。

 題材が良いだけに(しかも実話ベース)いつかまたリメイクされてほしい映画。