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白昼の死角のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

白昼の死角(1979年製作の映画)
4.3
昭和二十三年、東大法学部はじまって以来の秀才と言われた隅田光一(岸田森)が、同級生の鶴岡七郎(夏木勲)、九鬼善司(中尾彬)、木島良助(竜崎勝)らと設立した金融会社「太陽クラプ」は世相に巧みに乗じて急成長をとげたが、一年後、隅田が闇金融容疑で検挙されたことから崩壊の道をたどり、隅田は焼身自殺した。隅田を焼きつくす炎を見ていた鶴岡は犯罪者として生まれ変わる決意を胸に秘め、手形金融業「六甲商事」を開き、法の死角と盲点を突いた約束手形の割引を利用した完全経済犯罪をもくろむ。一億円の融資を求めている新陽汽船に目をつけた彼は、「日本造船・重役」なるニセ者(藤岡琢也)を仕立てあげ、徹底した演技指導を行う。知りあいのヤクザ太田洋助(千葉真一)の輩下30名が税務所員に扮して日本橋のとある会社を訪れ、脱税容疑捜索と称して全員を応接室に閉じこめた。室内は一瞬にして「日本造船・東京支店」に変わり、そこへ木島が新陽汽船の専務を連れてきて、ニセ木下重役が応接する……。鶴岡の綿密な脚本と演出の勝利だった。参考人として、鶴岡は警察に出頭を求められるが、犯人はニセ木下であり、彼は善意の第三者にすぎない。大手を振って署を出る鶴岡。しかし、東京地検の福永検事(天知茂)は鶴岡にただならぬ犯罪の匂いを感じとるのだった。次に鶴岡は、大和皮革専務上松に、やはり綿密な脚本と演出で罠を仕掛けた。鮮やかに上松から五千万円を騙し取った鶴岡の次のターゲットは川前工業。しがし、鶴岡のトリックを見破った福永検事は彼を詐欺罪で拘留する。状況証拠のみで、自分の自白がないかぎり、つかまらないことを知っている鶴岡は福永に不敵な笑いを浮かべるのだった。その頃、鶴岡の妻たか子(丘みつ子)は、夫と芸者綾香(島田陽子)との関係を知り、また、夫拘留のニュースにショックを受け、流産してしまい、鉄道自殺を遂げる。木島の身代りの自首で釈放となった鶴岡は、妻の死の悪夢にうなされながらも、彼は福永検事に挑戦すべく次の大仕事に取りかかった。彼はエルバドル共和国公使館の公使秘書、ゴンザレスを仲間に引き入れ、治外法権の公使館を舞台に五つの会社を相手に、大詐欺を仕掛け、総額三億七千万円をせしめた。騙された会社側が大騒ぎをしている頃、ゴンザレスは外交官特権で帰国してしまい、鶴岡は会社とゴンザレスの仲介をしたにすぎず、警察も手が出ない。
ところが、事件が闇につつまれようとしている頃、帰国したはずのゴンザレスが日本にまい戻ってきたのだ。ゴンザレスは逮補され、鶴岡に捜査の手が伸びるのも時間の問題となった。福永検事の執念は燃えた。
しかし、そのはりめぐらされた手配の網の目をくぐりぬけ、鶴岡はまたしても、逃げおおせるのだった。
高木彬光の傑作犯罪小説を、「蘇る金狼」の村川透が映画化。
アプレゲールとは、戦後の混乱の中で道徳や法律を無視し挑戦するように己の欲望のまま奔放に生きる若者のこと。
そんなアプレゲールでも鶴岡七郎は、法律や道徳に死角を突いて金融犯罪で立ち向かう犯罪者。
鶴岡七郎が立てた綿密な計画と演出で、手形詐欺の舞台である会社を作ったり、大使館の外交官特権を利用した多額の手形詐欺など大手の会社を出し抜く手練手管は、「オーシャンズ11」のダニー・オーシャン顔負けの痛快なピカレスクロマンがある。だが覚醒剤中毒で仲間から脱落する木島やゴンザレスに足を引っ張られ自滅する九鬼や鶴岡と死に別れる女たちに取り残され孤独になって罪の意識に苛まれても、法律に挑戦することを止めない鶴岡の姿は、哀しみが漂ったピカレスクヒーローそのものです。
松田優作主演の「蘇る金狼」などのハードボイルドアクション映画に負けず劣らずのハードボイルドなピカレスクロマンが味わえる傑作犯罪映画です。
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