ドント

ウエディングのドントのレビュー・感想・評価

ウエディング(1978年製作の映画)
4.5
 1978年。いやぁもうね、ウヒヒ、ボクこういうのが大好きでね、エヘヘ、もうずっとね、ニコニコしながら観ていましたよムフフ、ンフフ。ろくでもないですねぇムヒヒ。ある二家族の結婚パーティーをドタバタと黒くて悪いユーモアで彩ったステキな映画。
 荘厳な音楽と十字架、ここは教会。ある家とある家の結婚式から映画ははじまる。だがしかし、式の様子を撮影している雇われ映像班の女チーフは「楽隊じゃないの、参列者を撮るの!」と言い、バージンロードを歩かんとした花嫁のドレスにはシミがあり、老いた司祭はヨボヨボ。「はい、誓います」と笑う花嫁の歯には矯正器がガッチリと嵌まっていて、うふふ。この映画の前途多難ぶりがここで既に匂わされているわけである。
 ちょいとしたトラブルはありつつ式は無難に済み、ここからは皆で花婿の家へ移ってのパーティー。で、映画の本編はここからはじまる。どっちがどっちの親類で、どういう関わりでどういう人物なのか、なんてェことは丁寧に説明されぬまま、ご両家+α入り乱れての人間関係が群像劇という図式に突入する。
 群像劇と言えば整って聞こえるがまったくのカオスである。あっちで揉めたりこっちで仲良くなったり、ギスギスしたりすれ違ったり、とんでもねぇことが発覚したりさらにとんでもねぇことが露見したりのドッタンバッタン大騒ぎ。あらすじとか起きることをみんな書いてたらとてもじゃあないが紙幅が足りない。
 交通整理なんて知ったこっちゃねぇってな感じでトラブルが続々出来し、そのトラブルや出来事、起承転結が起承で終わったり起で投げ出されたり、かと思ったら起承転結がちゃんとついたりして、さらにはひどいプレゼントが送られて全員ドン引きしたり天候が悪化したりとパーティーは完全な渾沌と化す。
 終始ハチャメチャが押し寄せて、しかもこれわずか120分ちょいの映画なので濃度というか鍋の中の密度が尋常でなく、こちらの気分としては闇鍋のわんこそばをどんどん食わされる気分となる。しかしそれが世の中、人生というものではなかろうか? 人の営み、喜怒哀楽愛憎苦悩賢愚が結婚パーティーという場に濃縮還元されてどんどん飲まされてクラクラになってしまうのだ。
 まったくのカオスに見えて最後まで観ていくとどういう家族関係でどういった人となりなのかがなんとなくわかる気になる、というあたりがなかなかに凄い。そして割とひどいことが起きてるしボコボコ現れた問題のうち解決したのはごくわずかなのに、なんか最後は丸く収まった感じになるのがね、またいいですね。こういう映画を観ると私、元気が出ます。ソフト再発売希望。
ドント

ドント