櫻イミト

オスカー・ワイルドの櫻イミトのレビュー・感想・評価

オスカー・ワイルド(1997年製作の映画)
4.0
小説「ドリアン・グレイの肖像」(1890)や戯曲「サロメ」(1893)を書いた天才作家オスカー・ワイルドの同性愛と生き様を描く伝記映画。

19世紀末イギリス。妻も子もあった作家オスカー・ワイルド(スティーヴン・フライ)は、彼を敬愛するロビー(マイケル・シーン)から同性愛を教えられその道に耽溺するようになる。やがて『ドリアン・グレイの肖像』など傑作戯曲を次々と発表し名声を得る一方、16歳年下の貴族アルフレッド・ダグラス卿※愛称ボシー(ジュード・ロウ)と出会い恋に落ちる。しかしボシーの父親に男色を訴えられ裁判にかけられてしまう。。。

オスカー・ワイルドに興味があり勉強の為に鑑賞。思っていた以上にしっかりと作られていてとても見ごたえがあった。ワイルドを演じたスティーヴン・フライは外見もキャラクターも見事なハマり役と評価されている。

良妻と子供を持ち高い地位も得たワイルドは、30歳を過ぎてから気付いた自身の同性愛と家庭生活のバランスに悩む。しかし裁判の席では“表現者として嘘はつかない”との信念を貫き、正直に同性への愛を論ずる。当時の常識ではとんでもないことであり、すなわち家庭も社会的地位も、すべての破滅を意味する。それと知りながら真摯な言葉で愛の正当性を論ずる姿は殉教者のようだった。

裁判の後はエピローグのように駆け足で史実が描かれる。ここは少々わかりにくかったのでメモしておく。

1895年 卑猥行為の罪で有罪判決、2年の投獄と破産を宣告(41歳)
1896年 実母が心労で死亡
1897年 服役を終え放浪へ
1898年 妻が脊髄の病で死亡(変名し世間から身を隠していた)
1900年 梅毒で死亡(享年46歳)

ここで、出所後に書かれた有名な詩『レディング牢獄の唄』(1898)が朗読される。
「人は皆、愛する者を殺す 各々のやり方で
ある者は憎しみと共に ある者は優しい言葉で 〜」

この詩はファスビンダー監督が同性愛を描いた遺作「ケレル」(1982)でジャンヌ・モローが口ずさむ劇中歌として引用されている。
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