サマセット7

真実の行方のサマセット7のレビュー・感想・評価

真実の行方(1996年製作の映画)
3.7
監督は「オーロラの彼方へ」「フラクチャー」のグレゴリー・ホブリット。
主演は「愛と青春の旅立ち」「プリティウーマン」のリチャード・ギア。

[あらすじ]
辣腕で知られるシカゴの刑事専門弁護士マーティン・ベイル(ギア)。
彼は大々的に報道された大司教刺殺事件の弁護を無償で引き受けて、売名を狙う。
身柄を拘束された容疑者の19歳の青年アーロン(エドワード・ノートン)は、聖歌隊の一員で、犯行現場で第三者が大司教に覆いかぶさっているのを見た、自分はやっていない、と供述する。
ベイルはアーロンの供述態度から無罪を確信し、裁判で第三者による犯行の可能性を主張するが…。

[情報]
1993年発表の同名の小説を原作とする、1996年公開の法廷スリラー。

裁判を主題とする映画の特集などでよく選出される作品である。
作品の枢要部分を法廷でのシーンが占めており、リチャード・ギア演じる弁護士と、ローラ・リニー演じる検事の法廷での攻防が見どころとなる。

原題のPRIMAL FEARは、根源的恐怖、といった意味か。

今作がデビュー作となるエドワード・ノートンの演技が高く評価され、彼の名前を広く知らしめた作品。
彼は今作でゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞した。

今作は予備知識なく見たほうが楽しめるタイプの映画なので、興味がある方は、レビューを読むのはこれくらいにしておいた方が良い。

作品の評価は、批評家からは賛否両論。
一般層からはそれなりの評判を得たようだ。
興行的には成功しており、3000万ドルの製作費で、1億ドルを超える興行成績を上げた。

[見どころ]
ストレートな法廷スリラー。
法廷での鋭い弁舌は、やはりカッコいい。
次々と新たな事実が浮かび上がる物語に惹きつけられる。
リチャード・ギアが手段を選ばない野心的な弁護人を熱演。
容疑者役のエドワード・ノートンの演技は圧巻である。
ラストシーンの切れ味に特徴がある。

[感想]
なるほど、賛否両論、わかるー。という感じ。
全体としては楽しんだ。

リーガルサスペンスを見たい、という欲求には、今作はがっつり応えてくれる。
野心的な弁護士、過去の因縁がある女性検事、知的で公正な判事…。
陪審員の心証を得るためのロジカルな戦いからは、やはり目を離せない。

各役者の演技も満足させてくれる。
絶賛納得のエドワード・ノートンをはじめ、リチャード・ギアはイヤなキャラだがなんとも可愛げがあるし、検事役のローラ・リニーも中間管理職兼ダメンズウォーカー的苦労人の演技が上手い。
フランシス・マクドーマンドが精神科医の役で出ているが、相変わらず頼り甲斐が半端ない。
法廷ドラマで重要な判事役のアルフレ・ウッダードも、終始知的で公正でありながら人間味を失わず、いい味を出している。法廷で常に飲み物持ってるの、いいね!!

個人的には、ストーリーにやや強引なものを感じた。ある展開における一方当事者(および裁判官)の対応は、あまりに粘りに欠けるのではないか。なんというか、とてもフィクションっぽい。

全体として、やや詰め込み過ぎな感がある。
よくよく考えると、あの要素やこの要素、入れ込む必要あった?という疑問が残ることは否めない。

今作のラストシーンの切れ味はなかなかのものだ。
この作品はやはり、このラストに尽きるのだろう。

[テーマ考]
今作のテーマは、主人公の繰り返されるセリフや態度、作品構造などからすると、刑事事件の弁護人という職務と世間的な倫理の折り合いという点にあるのかもしれない。

個人的には、神父が悪人の告解を聞き、医者が犯罪者の治療をし、弁護士が容疑者の弁護をしても、それが彼らの公から託された仕事であって、他にする人がいないから、で納得できてしまうのだが、世間の願いが悪人滅すべし、であるのも当然である。
古典的な問いではあるのだろう。
もとより、当事者たる主人公の心情描写は興味深い。

[まとめ]
エドワード・ノートンの演技力を知らしめた、法廷スリラーの有名作品。
今作の監督、グレゴリー・ホブリットの監督作には、「オーロラの彼方へ」という知る人ぞ知る作品があるらしいのだが…、未見である!!!
いずれ見てみたい。