Jeffrey

不連続殺人事件のJeffreyのレビュー・感想・評価

不連続殺人事件(1977年製作の映画)
3.0
「不連続殺人事件」

冒頭、昭和二十二年夏。歌川家の豪邸で起きる事件、流行作家、望月の刺殺体で発見された。警察到着、容疑者二十九人、近親相姦、愛欲、嫉妬、異様な集い。今、八つの殺人を解明する狂気の人間像が映される…本作は昭和五十二年に曾根中生が大和屋竺、田中陽造、荒井晴彦らと脚本を執筆した坂口安吾原作を映画化したATG作品で、この度DVDを購入して久々に観たが登場人物が多過ぎるのが気になるが、悪く無い映画だ。松本清張は日本の推理小説史上不朽の名作として評価しており、欧米にもないトリックの創造であると称賛している。本作は人間心理への鋭い洞察と見事なトリックで日本推理小説史上不滅の名作と言われる坂口の同名小説の映画化で、当時かなりの人気を博したそうだ。監督は数々の異色ロマンポルノを発表し、他の追随を許さぬ独特な世界観で熱狂的なファンを抱え、約二〇年間の失踪の末に平成二十三年突然その姿を現して話題となった伝説の監督と言う話もファンの間では有名だろう。


さて、物語は終戦後の混乱が続く昭和二十二年夏。N県きっての富豪、歌川家の豪邸の離れで、流行作家、望月が全裸の刺殺体で発見された。彼は心臓を短剣で刺されており、洋館の二階でくたばっていた。、山中にあったため、交通が極端に不便で、警察が現場に到着するのが七時間も遅れ、その場に居合わせた巨勢が素人探偵を詰め止めることになった。事件が起こったと時、歌川家には招待客から使用人まで含め、二十九人にも及ぶ男女がいた。そのうちの十人は、多門の息子で詩人の一馬によって招かれていた。女流作家の宇津木秋子、秋子の夫でフランス文学の三宅、小説家の丹後、同じく小説家の矢代、その妻の京子、詩人の内海、劇作家の人見、その妻で女優の明石、画家の土居、そして巨勢。いずれも劣らぬ異様な人物たち。愛欲、名声の嫉妬、近親相姦的愛情などが入り乱れた不穏な空気の中、探偵、巨勢をあざ笑うかのごとく、さらに後七つの殺人事件が起こる…。


本作は冒頭にモノクロ映像で天皇陛下の玉音放送が流れ、当時の東京の風景が映される。廃墟と化した建物の中にいるー人の女性が窓から外を眺める。そこには男の姿もあり、女は服を脱ぎ男は洋服をさらけ出し抱き合う。カットは変わり、商売のうまい画家のアトリエへと変わる。そして、荒涼とした大地を和服姿で歩く男を正面から捉えタイトルバックが現れる。続いて、大豪邸の中の構図を様々な角度からカメラがとらえ、ナレーションが加わる…と簡単に冒頭説明するとこんな感じで、冒頭から約七分位は白黒で映し、それ以降はカラーフィルムに変わる。この作品は途端に殺人事件が始まって、途端に警察が来て途端に現場検証して途端に指紋をとられ、途端に会食が始まりその事件の会話が始まる。

曽根監督は学生時代から坂口に傾倒し、本作は長年映画化を考えていた末の念願の企画だったとのこと。七〇年代に活躍したプログレバンド、コスモスファクトリーによる不吉な音楽、出演者たちの怪演と多数登場する奇人変人たち、そして曽根監督ならではの不穏な空気、本作は異様と言う言葉が最もしっくりくる世紀の怪作であると評された一本と言われている。誰が殺されるかはネタバレになるためもちろん話さないが、殺され方はこのような感じである、刺殺、絞殺、毒殺、 墜死である。本作の唯一良いところは、文学的要素を一切排除し謎解きゲームのように描いているところだ。だから娯楽性があり、万人受けができている。しかし、長いのと登場人物が多いことにより、混乱は否めない。
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