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ストレート・トゥ・ヘルのarchのレビュー・感想・評価

ストレート・トゥ・ヘル(1987年製作の映画)
4.0
銀行強盗をした三人組は逃亡の末、ある奇妙な街にたどり着く。現代と隔絶された無情の世界、それは西部劇の世界への時代遡行を思わせる。

本作では現代における価値あるものが尽く踏みにじられる。"命に一銭の価値無し"だなんて標語が出てくるが、紙幣すら紙切れ同然の世界では一銭すら価値はない。

愛と金、鉄と珈琲、性的緊張の物語だと本作は語られるが観客に価値あるものだと感じさせるのは珈琲ぐらいなものだ。
西部劇のような無情な世界観は彼ら無法者にとって聖地。余所者を許さない街の人間が受け入れたのは"同族"だったからだ。

そこで彼らは同種の存在達と共に4日間を過ごすが、3日目の夜、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を幻視させる。それは4日目の最後の死闘を予感させるものだ。
4日目の死闘、西部劇の最後に付き物の決闘である。命に刹那のやり取りで奪われ、無情な世界に我々の常識は通用しない。生き残ったのは誰か。何が命運を分けたのか。女性が尽く生き残り、1台の車で街を去る。街には現代の波が押し寄せ、全ては無かったことのようにされる。
破滅的で刹那な体験、インディーズ映画的なストレートでブサイクな物語の語り口。パンク映画の教祖アレックス・コックスに相応しい最高の現代西部劇であった。
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