みてべいびー

バニー・レークは行方不明のみてべいびーのネタバレレビュー・内容・結末

バニー・レークは行方不明(1965年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

すごい良かった。観て良かったなぁ。物語もよくできてるし、映像も白黒の良さが出ててすごく綺麗。無駄のない美しさ。
今となってはこうゆう類の話結構あるというか、部屋に戻ってみたら持ち物全部なくて内装まで変わってるみたいな謎のからくりがシャーロックホームズにありそうでイギリス的な気もするけど、そうゆう誰も信用できないミステリーの走りなんじゃないかなぁ。それでいて意外性のある展開が用意されてるから今観ても新鮮だった。
バニーが存在するのかをはっきり明言しない兄貴が怪しいなぁとはちょいちょい思ってたんだけど、バニーが実在しなくて単に妹の妄想ならそもそも警察に通報したりしないよなぁ、、、にしても妹への執着をひしひしと感じるから、もしかして近親相姦で妹は妊娠してしまったけど子供は死産か中絶して、そのショックから妹はバニーの存在を妄想してしまっている、とかなのかなぁとか色々考えた。あと警察に「ミセスレーク」って言われて訂正しなかったから、もしかして本当は兄妹じゃなくて夫婦?とかね笑。
あと度々出てくる家主と園長が曲者すぎる笑笑。サドの偽物骸骨つかまされてるのは一目瞭然だったけど、それで幸せそうだから知らない方がいいこともあるよね。でも園長は意外と鋭かった、兄への考察が。
保育園で警視と話してるときに兄がブランコに乗り始めて、あ、こいつもしかしてやばいやつかなって思った。お風呂に入って話してる場面からも異常な兄妹間の親密さを感じたし。からの人形焼き。あそこのカットが本当に素晴らしかった。燃やした瞬間カメラが彼の顔にドリーしてlow angleから撮る感じ、炎に照らされた狂気の眼がめっちゃ良かった、興奮。あそこでもう少し音楽の盛り上がりが欲しかったかも。
家の外からバニーの持ち物を燃やす兄を見つめる妹の構図が美しかった。そこから急に子供返りする兄が恐いけど、さすが妹も扱いをわかってる。てかなんなら妹はもっと前から兄を疑っててもよかった気がするけどね。恐怖のかくれんぼ始めたと思ったら、家の中から歌いながら一列でスキップして出てくる感じがツボだった。Higher!!つってブランコ押しまくる兄の狂気と、娘を護りたい妹の必死さが画としてすごかった。警視間に合ってよかったね。
一つ文句を言うとすれば、せっかくLawrence Olivierなのにニューハウス警視の存在感が薄い。登場するシーンがあまりにも普通で、もうちょっと濃いcharacter introductionがあってもよかったのかなぁと。役柄的に彼である必要性が見えなかった、もちろん演技はいいんだけど。
でも振り返ると伏線も本当しっかりしてて、観てる側も「全ては妹の妄想に過ぎずバニーは存在しないんじゃないか」ってゆう兄の策略に警察同様思いっきりハマっていく。妹は誰からも信じてもらえなくて、挙げ句の果てに犯人が肉親。その流れがまさに「女はすぐヒステリックになるし頭がおかしい。面倒くさいから精神病院にでも入れとけ!」みたいな女性蔑視的風習、よくある悲劇的なオチを皮肉ってるんだと思う。そう考えるとまじで粋な映画。観終わると少しでも妹の正気を疑った自分を反省したくなる。原作小説がパリ万博で起きた都市伝説「消えた貴婦人」事件に影響受けてるだけあって、その悲劇的顛末(本当かわからないけど)への戒めというか現代的解釈なのかなぁ、とか思った。最後バニーを抱えながら一心に前を見つめて歩いていく妹の眼差しがかっこいい。
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